今年は、障害者雇用が大きく変わる1年となる。昨年発覚した中央省庁の障害者雇用水増し問題を受け、国は約4千人もの採用を計画。再発防止へ、厚生労働省の権限強化などを盛り込んだ障害者雇用促進法改正も予定される。

 問題は、民間に範を示すべき国の役割、姿勢が見えないままであること。数合わせの採用では、民間との人材の奪い合い、障害者を受け入れる現場の混乱は避けられまい。

 雇用促進法は「率先して雇用する立場」の国や地方自治体が2・5%、民間企業が2・2%と雇用率を定める。「雇用率達成ありき」の姿勢から生まれたのが、中央省庁の水増し問題だった。退職者や死者まで算入するといった手口で、不適切な計上は2017年6月時点で28行政機関の3700人に上った。

 水増し分を一気にカバーしようとするのが、今年の採用計画。常勤雇用については、人事院が障害者対象の国家公務員試験を実施する。さらに、各省庁が非常勤を含め人材を募集し、年末までに約4千人の採用を目指す。

 懸念されるのが、大勢の障害者を迎える職場の環境整備。雇用実績も、雇用する意欲もなかった職場で、短期間で受け入れ準備が整うわけがない。にもかかわらず過大な採用計画を掲げるのは、「雇用率達成ありき」の姿勢が変わっていない現れだろう。

 「仕事自体はこなせても、職場内の人間関係でつまずいた」「悩みを相談できないまま、無理を重ねて体調を崩した」-。障害者が職場定着に苦労する理由はさまざまだが、重要なポイントの一つが職場内のコミュニケーションの有無だ。

 障害のある人とない人が「同僚」として、困りごとも安心して相談できるような職場環境は、一朝一夕には生まれない。研修を重ねるなどして、心のバリアフリーに地道に取り組んでいかないと、職場定着は望めない。

 数合わせの雇用率達成ではなく、雇用の質で民間の範となるのが国の本来の役割であろう。例えば、職場定着のノウハウが乏しい精神障害者や、重い知的障害者でも働き続けられる仕組みづくり。通勤時の移動サービスや業務中の介助者の活用、在宅ワークの推進も期待される。

 コミュニケーションが苦手でも、得意分野では並外れた集中力を発揮するなど、本人の強みを生かした就労の可能性を切り開くことに、国は率先して取り組むべきだ。

 2月3日、人事院による国家公務員の第1次試験(筆記)が行われる。受験者の個別事情に応じたきめ細かな配慮ができるか、試金石となるだろう。試験をする側の姿勢も試されている。