「こころよく/我にはたらく仕事あれ/それを仕遂げて死なむと思ふ」

 石川啄木がこう歌ったように、生きがいのある仕事を求め、それに人生をかけたいと願う人は多いだろう。

 「働く」とは、「仕事」とは、何だろうか。人によってさまざまな意味や捉え方があろう。生活の糧を手に入れる手段であり、自己実現でもある。さまざまな面で成長できる機会ともなる。

 仕事を巡る環境は激変している。平成時代は非正規労働者の増加にみられるように雇用の劣化と重なった。残業などで厳しい環境が少なくない。人工知能(AI)に仕事を奪われる不安も覆う。

 一方で社会は今、深刻な人手不足にある。働く場所は選ばなければ多くある。特に若い人にとってはそうだ。

 求人倍率は全国で高水準が続き、本県も新規求人倍率が2倍を超えて過去最高を更新した月があるほどだ。半導体製造の新工場が建設中で、自動車関連の集積も進む。

 これらの産業は波及効果を広げて確実に雇用を増やし、本県振興に大きく寄与する。働く人が新規分野に対応した能力を磨くことが、地域の発展を支えることになる。

 とはいえ、誘致企業に頼り切ることなく、岩手ならではの産業、なりわいをもり立て、さらに創出していくことが、足腰の強い地域づくりにつながる。地道に維持、開拓する姿勢を保ちたい。

 自然を生かした農林水産業にも潜在力があるはずだ。例えば漁業。担い手不足が長年の課題だが、豊かな海と生きる仕事は、収入に増した価値があるのではないか。もっとアピールしていいし、地域で盛り上げたい。

 「よそ者の視点」も参考になろう。東京都内の貿易商社勤務などを経て、久慈市山形地区で地域おこし協力隊員として2年半活動した志水彩子さん(34)の見方はこうだ。「東京にしか仕事がないと思っていたが、違った。資源はいっぱいある」

 シラカバの樹液を生かした清涼飲料水の開発に取り組んだ。飛び込みで北海道の企業に働きかけ、地元の山林所有者との連携を実現、軌道に乗せた。仕事はつくることができると実感した。

 そして周囲には、情報発信力に優れた短角牛肥育農家の後継者ら魅力的な人たちがいた。生き生きとして働くそんな人たちに触発されながらの経験は、次の舞台として海外での地域開発に向かわせるほど豊かだった。地域には資源も人材もある。

 混とんとした社会だからこそ、働く意義や価値が改めて問われる。時代を拓(ひら)く宝が足元に眠っていないか、しっかり見つめたい。

(菅原和彦)