「これが自分たちの豊かな暮らし」と穏やかな笑顔を見せる佐藤幸吉さん(右)と昭子さん

 グラスやカメラがぎっしりと飾られた店内で、空き瓶を使った色とりどりのランプが穏やかな光を放つ。少し奥に進むと、空き缶や栓抜きを組み合わせた「リサイクルアート」も並んでいる。花巻市大迫町の早池峰山麓にある「星耕茶寮(せいこうさりょう)」は、築100年以上の南部曲がり屋を改装した古民家レストラン兼ギャラリー。ここは、捨てられてしまうような物が生き生きとよみがえる不思議な空間だ。

 「道に迷わなかった?」と出迎えてくれたのは、同店を営む佐藤幸吉さん(72)と妻の昭子さん(62)。来店するのは年配の女性や物づくりが好きな人たちが多く、秋田県など県外から訪ねてくることもあるという。繁華街に比べると気軽に立ち寄ることは難しいが、「わざわざ来てくれる分、中身の濃いやりとりができる。みんなゆっくりしていってくれる」とその場所ならではの良さを語る。

 幸吉さんは1975年から15年ほどの間、盛岡市内で大陸料理を提供する「馬賊(ばぞく)」や自然食の「菜根亭(さいこんてい)」を経営していた。春巻きなどの本格的なメニューは当時珍しく繁盛していたが、ある時「お金をもうけることが幸せではない。自分の好きなように生きることが幸せではないか」と考えるように。田舎暮らしやガラスなどの物づくりをするため各地を探していたところ、雨漏りがしない南部曲がり屋を見つけて1988年4月に移住。できる部分は自ら改装し、同年10月に「星耕茶寮」をオープンした。

バラエティ豊かな料理が並ぶ「季節のお膳」

 「季節のお膳」(税込み1200円)は、和風だしの海鮮ラーメンや雑穀入りご飯、とろりとした夕顔の煮付けなどバラエティ豊か。和食や洋食、中華とジャンルにとらわれない家庭料理が並ぶ。春は山菜、秋はキノコなどその時期に手に入る材料を使い、庭で採れた野菜が登場することも。事前に伝えておけば「盛岡のお店時代の料理が食べたい」といった要望にも応えるという。食事だけでなく、山の地下水で入れるコーヒーも人気だ。

 店のテーマは「捨てる物を生かす」。家具や照明を自ら作る幸吉さんのもとには、材料になりそうなさまざまな物が持ち込まれる。昭子さんは「(幸吉さんは)毎日何か作っている。次は何ができるのかいつも楽しみ」と見守り、幸吉さんは「自分たちにとってこれが豊かな暮らし。楽しくやっている。家の中も暮らしぶりも見てほしい」と笑顔を見せる。

memo 「星耕茶寮」は花巻市大迫町内川目17の5。営業時間は午前10時から午後3時まで。電話は0198・48・5871。不定休のため、来店の前には電話で確認するよう呼び掛けている。