北朝鮮の非核化に向け、米朝首脳が再会談する方向という。トランプ米大統領は、国連での韓国の文在寅大統領との会談を受け「日時や場所が近く発表される」との見通しを明らかにした。

 昨年の国連総会ではトランプ氏が、核・ミサイル実験を繰り返す金正恩朝鮮労働党委員長を公の場で「ロケットマン」となじったものだ。初会談は6月。状況は大きく転換したが、非核化は遅々として進まない。その行程や北朝鮮が求める体制保証など、具体策は先送りされたためだ。

 今年7月にポンペオ米国務長官が訪朝した際、北朝鮮は一方的な非核化を要求したとして米側を「強盗のようだ」と非難した経緯がある。軍事的緊張に逆戻りする可能性が否めない現状で、再会談では完全非核化が確実に前進するよう、より具体的な合意を結ぶ必要がある。

 再会談の方向は歓迎するとして、懸念はトランプ氏の前のめり気味の交渉姿勢だ。会談の中身に先行して、いち早く日程や開催地に言及したのは、2016年米大統領選をめぐるロシア疑惑などによる政権の混乱を打開したい同氏の思惑絡みとの見方がある。

 11月に迫る中間選挙で、与党共和党は劣勢という。「核の脅威はなくなった」と6月会談の成果を誇示してきたトランプ氏が、選挙を前に「手柄」を失いたくないと思うのは想像に難くない。

 前のめりの懸念は、韓国側にもある。最低賃金の引き上げにより失業者が急増するなど、経済政策のつまずきで支持率が低下した文政権にとって、南北融和の動きは起死回生の好機に違いない。

 経済制裁に苦しむ北朝鮮だが、それでも核放棄に絡めて米側に「相応の措置」を求めるなど強気の姿勢を崩さないのは、関係国の足元を見た上でのことだろう。

 北朝鮮は核関連の総括的なリスト提出や廃棄の行程表などで合意する条件として、朝鮮戦争の終結宣言を要求。それがアジア太平洋地域の米軍配置の見直しを促し、在韓米軍や在日米軍の意義を変化させるのは当然の成り行きだ。

 中国の軍事的拡張を日々目の当たりにする日本政府は、こうした動きを警戒するが、朝鮮戦争の当事国でない立場で融和ムードに水を差しては国際社会で孤立しかねない。展開次第で、北朝鮮への「圧力」をてこに拉致問題解決を目指す政府方針が見直しを迫られる可能性は否めまい。

 交渉に日本の立場を反映させるのに、頼みの綱はトランプ氏というもどかしい状況が続くが、米韓が前のめり気味の現状では、「当事国」でないからこそ見えてくるものもあるはずだ。その意味でも、政府は発信力を高めたい。