文化庁が「文化財レッドリスト」を作成し、存続が危ぶまれる伝統工芸などの支援を強化する方針を決めた。技術保持者が全国的に減少し、原材料の生産も先細る中、継承に向けた基礎データとなる。

 全国の技術保存団体や生産者の実態調査を踏まえ、後継者が少ない分野などをリストアップ。担い手育成事業などを優先的に補助する。

 首都圏に比べ地域コミュニティーが濃密な本県は、地域の有形・無形の文化を守ろうという意識も高い。だが、人口減と過疎化で地域そのものの存続が危ぶまれる現状は、伝統の継承にも影を落とす。一定数の担い手が確保できても、高度な技術であればあるほど、継承は難しい。

 技術者の減少が、文化財修復に及ぼす影響も大きい。東日本大震災津波で被災した文化財の再生に際しては、全国の技術保存団体の支援があった。その後も各地で自然災害が頻発する中、技術者不足で被災した地域の宝が救えなくなることが懸念される。

 その意味でも、リストを作成し危機感を共有する意義は大きい。二戸市での漆文化の継承に向けた職人育成など、各地の実践例も併せて共有し、継承につなげたい。

 一戸町の取り組みもユニークだ。世界遺産を目指す御所野遺跡の復元整備は、埋蔵文化財の保存活用のモデルとして知られるが、伝統工芸の調査研究も一体で進めている。

 町が誇る伝統工芸「鳥越の竹細工」と縄文時代の編み物の技法を比較研究。さらには、縄文人が土器を作る際に底に付いた編み物の痕跡を詳細に調べ、その素材が鳥越と同様にスズタケだった可能性が高いことも突き止めた。

 自然と共生した縄文文化の現代への継承を証明する成果。竹細工職人の励みとなり、縄文の価値も高める。学問の垣根を超えた広い視野での調査研究の進め方は、各自治体の参考になるだろう。

 文化庁は今後、数年かけてリストを作成する方針。地域住民が、伝統の価値を見つめ直す契機にもなってほしい。素晴らしい伝統工芸の背後には、それを生み出した職人、原材料の生産者のたゆまぬ努力がある。

 震災後、本県の被災文化財再生に尽力し、次代の修復技術者育成にも取り組むNPO法人文化財保存支援機構(東京)の八木三香事務局長は、次のように指摘する。

 「手仕事が機械に取って代わられる中、長い修業で技術を磨いてきた職人の実直な生き方が困難になっている。どんなに社会のシステムが変わっても、そのような技術者によって文化財が継承されてきたことを忘れてはならない」

 伝統の継承は、職人、生産者への敬意から始まる。