「つなぐ」視点伝わる 阪根・日本NIE学会長に聞く

「新聞と歩む 復興、未来へ」をスローガンに、盛岡市などで7月26、27の両日開かれたNIE全国大会に参加した日本NIE学会の阪根健二会長(63)に今大会の意義や感想、今後の展望を聞いた。
(聞き手は報道部・内城俊充)
-盛岡大会全体の印象と意義を聞かせてほしい。
「『つなぐ』がキーワードの大会と感じた。NIEと復興、復興の中における人と人。そして新聞を切り口に(津波で)亡くなった方々の命の意味をつないだ。非常に悲しい東日本大震災をどう乗り越えようか、乗り越えた先をどう見ようかという視点で、岩手だからこその良さがあった」
-1日目の感想は。
「震災を経験した釜石高2年佐々木千芽(ゆきめ)さん、大船渡市出身の宮城教育大3年高橋莉子(りこ)さんは、それぞれ新聞を通して情報を得たり、発信したりした貴重な経験が今につながっている。真摯(しんし)さに感銘を受けた」
「教育・報道関係者らの座談会では、災害時の学校や報道が果たした役割と情報の重要性、新聞の役割の重さを再認識できた。世代や職種を超えた座談会は、今大会の柱であり、意義深さを感じた」
-分科会をどう見たか。
「単に新聞に親しむという視点から発展し、どう活用するかという点で、重厚で有効な取り組みが多かった。また、社会に開かれた教育課程を重視する新学習指導要領を意識した点も、NIEにとって重要な視点だった」
「異色だったポスターセッションでも、保育園でNIEを実践する『ぴぴっと(PPT)研究会』は生涯学習が盛んな岩手らしく、地域などとの連携を新聞がつないでいるという感触を得た」
-全国的に災害が多発する中、防災や復興に新聞、NIEが果たす役割は。
「多くの災害に見舞われる中、情報によって勇気づけられるなど光となったり、誤った情報やフェイクニュースなど影となったりする。そのため、情報をきちんと見分け、活用する能力は、国民にとってなくてはならない能力となる」
「そこで、信頼性という視点から、新聞がクローズアップされる。岩手日報もそこに腐心した紙面を多く配信し、教材として学校が活用した。震災後に生まれ、これからを生きる子どもたちに震災の経験はなくても、語り継ぎ、つなぐ役割を果たしてほしい」
-盛岡大会を受け、全国のNIEの取り組みについて期待することは。
「NIEは未来をみるための教育だ。過去の新聞を使い、未来につなぐために、そこにある思いや願いを読み取る。そして、現在の新聞から、今を感じ、動くということだろう。ぜひ、多くの人にNIEを体感してほしい」
阪根 健二氏(さかね・けんじ)東京学芸大大学院修了。専門は学校教育学。鳴門教育大大学院教授。16年4月から同大地域連携センター所長と日本NIE学会会長を務める。神戸市出身。63歳。
日本NIE学会
新聞を教育に活用する研究、調査、教育実践などを目的に2005年発足。教育、新聞関係者、一般市民らで組織する。会員は約380人、20法人(17年11月時点)。幼・小・中・高・大学・社会人を含めたNIE実践の推進と開発、NIE教育の普及・助成などを進める。