かねて忘れっぽい性格に加え猛暑の疲れ。それにしても、ひどい。毎月恒例、岩手から宮城まで震災被災地を巡った夜、金ケ崎町に寄って盛岡に帰った。先々で、スマホとカメラを忘れた

▼あわててあちこちに連絡、無事に回収。同行した友人に「妖怪のせいじゃない?」と慰められた。金ケ崎に寄ったのは、江戸風情が漂う侍屋敷大松沢家で開かれた「怪異妖怪会議」に出席のため。今なお妖怪が息づく岩手の風土を体感した、と納得した

▼謎めいた会議だ。参加者は県内外の妖怪ファン、学芸員、大学の研究者、学生ら。その議題は、カッパの色の研究、座敷わらしの体験談、「早朝お化け 悪羽妖(おはよう)」の考察など。「妖怪弁当」もリアルでおいしい

▼参加者の一人、児童文学作家野泉マヤさんから新作「みちのく妖怪ツアー」(新日本出版社)が届いた。子どもたちが岩手など東北の妖怪ゆかりの地をバスで巡る物語

▼大人が読んでも怖い。例えばナマハゲが持つ「ナマハゲ台帳」。人間の行いが記録され、悪いことをした人は連れ去られる。隠したつもりでもナマハゲにはお見通しだ

▼妖怪への恐怖心は、悪事には罰が下るという社会規範の下支えでもあったろう。今はどうか。障害者雇用水増し問題など、良心の規範の底が抜けた感がある。妖怪を感じ考えるにつけ、現代の醜怪(しゅうかい)さが際立つ。