佐々木千芽さん

 東日本大震災の被災3県で初開催となったNIE全国大会盛岡大会。盛岡市の市民文化ホールを会場に、初日の26日は、開会式に続く全体会で、明治大の斎藤孝教授が「新聞力と復興」と題して記念講演。座談会では、震災を経験した大学生と高校生のほか、学校で新聞作りに取り組む山田町の小学校教諭や元新聞記者で釜石市で復興支援に携わる「釜援隊(かまえんたい)」の隊員らが意見交換した。震災から7年4カ月。教訓を未来へつなぐために私たちは何をすべきか。新聞、教育双方の関係者が果たしてきた役割を振り返り、未来の人づくりに向けて真剣な議論を繰り広げた。

 司会 東日本大震災発生時、小学生と中学生だった若い2人に来てもらった。震災当時の様子や活動を振り返ってもらいたい。

 佐々木さん 現在は釜石高2年生で、生徒会のボランティア活動に参加している。震災当時、釜石市の鵜住居(うのすまい)小3年生で授業中に激しい揺れと地鳴りが起き、とても驚いた。ただ、避難の際は訓練通り、近くの釜石東中の生徒と手をつないで高台まで逃げることができた。中学生が手を引いてくれたおかげで、私たちの命も、地域のみなさんの命も助かった。中学生の手はとても温かく、大丈夫だよと声を掛けてくれたのはうれしかった。テレビが映らず、新聞の天気予報の情報だけでもうれしかった。

高橋莉子さん

 高橋さん 宮城教育大で教員を目指している。当時は大船渡市の一中1年生。住んでいた地域は比較的被害が少なかったが、父が買ってきた新聞で被害の大きさを知った。震災後の3月18日に、地域のみなさんを励まそうと学校新聞「希望」の第1号を発行した。学校新聞は直接地域の人とつながる手段で、避難所や仮設住宅で一人一人に手渡しで配布した。地域のために始めた学校新聞が全国からの支援にもつながり、逆に私たちが励まされた。

 司会 震災1週間後に学校新聞を発行したのは行動が早かった。

 高橋さん 大変な地域のために自分たちがとにかく動かなければならないという気持ちが大きかった。中学生でもできることを考えて行動した。がれき撤去や避難者との交流、犬の散歩も手伝った。

 司会 佐々木さんは中学時代からボランティア活動を続けているが、どういう思いで取り組んでいた。

 佐々木さん 被災地にたくさんの支援者が訪れるのを間近で見て、ありがたいと感じていた。助けられる人から助ける人になりたいと思い、生徒会に入ってボランティアの活動を始めた。震災前にも募金活動はしたことがあったが、震災後から気持ちを込めて取り組むようになった。

 司会 中学生としてボランティアの活動をしていく中で、難しかったことは。

 佐々木さん 運動会や文化祭の場で(大地震に見舞われた)熊本やネパールへの支援募金を行った。しかし、中学生は先生の許可がないと物事を始められないというもどかしさがあり、当時はできることは少ないなと感じていた。

 司会 佐々木さんが今、中学生でもできることがあったと感じていることは。

 佐々木さん 普段から、地域住民とコミュニケーションを取ることが大切だと感じる。震災当時も、小中学生が逃げるのを見て、地域のみなさんも逃げることができたと聞く。災害に備えるために、地域との交流はとても大切だと思う。

 司会 高橋さんは学校新聞を作った時、中学生だった。

 高橋さん 中学生でできることは限られていると感じたが、地域との関わりについて考えるなど、自分から考えを発信する活動が大切だと思う。

 司会 学校新聞は後輩たちが発行し続けている。今はどういう状況なのか。

 高橋さん 継続して発行しているが、当時のきっかけや思いをよく分からないまま続けていて、作業のようになってしまっている。風化が課題だと感じている。

 司会 風化を防ぐためには、何ができるか。

 高橋さん 岩手の教員を目指している。震災の経験を自分の言葉で伝えたり、新聞を授業に用いることで、過去の情報を知ったり考える機会を子どもたちに提供することが、私のやるべきことだと感じている。そういった機会があることで、子どもたちは自分で課題を見つけ、それについて考え解決する力を身に付けることができるのではないか。

 司会 震災の教訓を未来へつないでいくためには何が必要か。

 佐々木さん 一番は語り部を増やすこと。これから小学校に入学する世代は震災を経験しておらず、風化が一気に進んでしまう。経験した世代が知らない世代に伝えることで、風化を防止できる。将来は大学で地域政策を学び、地域のまちづくりに貢献したい。ラグビーワールドカップのボランティアにも参加して、世界に釜石のことを発信したい。

 高橋さん 人と人とのつながりが大事。学校新聞「希望」で地域の人とのつながりだけでなく、全国にも交流が広がった。一般の新聞は、地域の話題が載っていて、新しい人との出会いがある。新聞を教育に用いることで将来子どもたちの学びを深めたい。未来を担うためには、過去の情報を知ることがまず大事。そのために新聞が有効だと思う。


佐々木 千芽(ゆきめ)さん 釜石高2年(震災当時は釜石・鵜住居小3年)

高橋 莉子(りこ)さん 宮城教育大教育学部3年(震災当時は大船渡・一中1年)

司会 村松 文代さん IBC岩手放送アナウンサー