岩手・宮城内陸地震から14日で10年。大きな打撃を受けた被災地の観光関係者は、誘客に向けた取り組みに力を注ぎ、災害医療や防災関係者は当時の教訓を今後に生かそうと奮闘してきた。しかし、観光客の伸び悩み、災害の風化など課題にも直面している。さまざまな分野における復興の今を探った。

 栗駒山(1627メートル)の8合目にある一関市厳美町の須川高原温泉(稲垣栄会長)。岩手・宮城内陸地震の影響で一時は売り上げが約2割に落ち込み、東日本大震災などの風評被害も追い打ちをかけた。それでも須川の湯の力を信じ、従業員と常連客は10年間、一緒になって復興への道を歩んできた。

 10年前、同温泉で地震に遭った宮城県南三陸町の漁業佐藤義勝さん(75)ら親類4人は「この温泉が大好きだから」と今年も湯治に訪れた。

 「部屋にいたら突き上げられるように揺れた」と振り返るのは妻の愛子さん(72)。周囲を飛び回るヘリコプターの数に「ただ事ではない」と感じた。

 従業員の誘導を受け、ホテルのロビーで待っていた時、建物に大きな亀裂が入っていたのが印象深いという。本県側の国道342号は通行不能で、夕方、従業員らの先導で秋田県側から山を下り、自宅に帰った。

 翌年、義勝さんはいつものように「湯治に出かけよう」と言った。愛子さんが「怖い」と答えると、義勝さんは「行ってあげないと温泉がなくなる」。その言葉が愛子さんの胸に響いた。以来、「当時の苦境を一緒に乗り越えた従業員や仲間に会いに来ている。安心して泊まっている」と笑う。