2008年の岩手・宮城内陸地震から14日で10年を迎える。震源に近い一関市厳美町周辺は、土砂崩れによる集落の孤立や旧祭畤(まつるべ)大橋の崩落など大きな被害を受けた。あれから10年。自宅に戻り日常を取り戻したかに見える住民は、節目の日を前に何を思うのか。被災者の今を追った。(12日紙面で特集)

避難生活支えた交流 一関の夫妻

 岩手・宮城内陸地震によって土砂が崩れ、集落が一時孤立した一関市厳美町市野々原(いちののばら)地区を訪ねた。かつて磐井川をせき止めるほど大きく崩れた山には木々が茂り、被災の跡はもう感じられない。同地区で暮らす沼倉朝夫さん(69)は「自分たちが植樹した木もこんなに育ったんだな」と感慨深げに山を見上げた。

 妻恵子さん(63)は「長かったような、短かったような」と10年の月日を振り返る。道路が寸断され自宅が孤立した夫妻。慣れない避難所暮らし、磐井川の復旧工事に伴う自宅の移転を余儀なくされ、再建まで仮設住宅で過ごした。今の自宅に戻るまで1年半を要した。

 そんな生活の支えとなったのが、遠野市の上郷小児童との交流だった。夫妻の境遇を報道で知った児童は、クリスマスリースや手紙を贈って励ました。

 時間の経過とともに平穏な生活を取り戻し、気持ちも落ち着いてきた。だが、地震を忘れたことはない。朝夫さんは「自然災害は一瞬にして全てを失う。怖いものだということを忘れないでほしい」と訴えた。

(一関支社・三浦隆博)