号外発行へNIE体験

 7月26、27の両日、盛岡市を主会場に開かれるNIE全国大会盛岡大会で号外を発行する盛岡商高新聞編集委員会と盛岡白百合学園高編集委員会のメンバー計16人は今月、NIE体験取材や望月善次実行委員長インタビューを行った。2カ月後に迫った本番に向け、記事の書き方や写真の撮り方に磨きをかけ、号外制作への意欲を高めている。

記事を選び意見交換

「いっしょに読もう!新聞コンクール」の作品づくりに挑戦し、選んだ新聞記事の感想や意見を発表する盛岡商高の生徒(撮影担当=盛岡商高・森琴弥、菅原東紅)

 盛岡商高新聞編集委員会は14日、同校会議室で「NIE教室」を開き、家族や友人と新聞記事を読み、意見を交わす「いっしょに読もう!新聞コンクール」(日本新聞協会主催)を体験した。一人一人が持ち寄った記事について語り合い、異なる考えを共有し新聞を読む楽しさを体感した。

 新聞編集委員会の2年生、佐藤千尋、菅原東紅(とうこ)、増沢果乃(かの)、森琴弥(ことみ)、宇土沢光里(ひかり)、浦田彩加(あやか)の6人が参加。岩手日報記者から新聞の読み方や記事の書き方、取材写真の撮り方を学んだ後、それぞれが選んだ記事について意見交換した。

 メンバーは、事前に2週間分の新聞から記事を一つ選び、感想を発表。発言に対する質問や記事に対して各自が感じたこと、考えたことを述べ合った。

 持ち寄った記事は、大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手とマリナーズのイチロー選手の再会、釜石市の子育て支援センターの取り組み、あおり運転の統計などさまざまだ。

 世界で活躍する県人選手に対する感動や育児環境、自動車運転についての問題意識など、感想発表や意見交換から話が広がった。

 一つの記事を巡り、一人一人の捉え方や感じ方が違うことに、森さんは「いろいろな視点から記事を読み、疑問を持つことが大切だと分かった」と実感。

 菅原さんは、情報収集ツールの主流がネットになっている昨今を顧み新聞の価値を再認識した上で「質問を受け、同じ記事でも別な角度から読むと異なる発想が生まれると感じた。この学びを委員会活動に生かしたい」と意欲を語った。

 委員会を担当する菊池久恵教諭は「一線の新聞記者から直接、新聞の読み方や取材のコツを教わる機会は貴重だ。生徒たちはこの機会を生かし、新聞をより深く読み、伝え方を考えられるようになってほしい」と期待した。

(宇土沢光里、浦田彩加)


一人一人違う関心 体験ルポ

 放課後、学校の会議室で開かれたNIE教室。岩手日報社の記者は、優しい笑顔で接してくれたが、私はとても緊張していた。親しい友人以外に自分の考えを話すことはあまりない。

 2週間分の新聞から自分が気になった記事の感想をまとめ持参した。普段、情報やニュースをテレビかスマホでしか取得しないため、大量の新聞を隅から隅まで目を通すのは骨が折れた。

 一ページ一ページ開くと見出しの大小や記事量で、どの情報がどれくらい重要か一目で分かる。テレビやネットにはない新聞の特長だ。意外なところに目を引く記事がある。新聞をゆっくり読むのも悪くない。

 選んだ記事は、平昌(ピョンチャン)冬季五輪フィギュアスケート男子で2連覇を果たした羽生結弦選手の凱旋(がいせん)パレード。決め手は同じ東北人としての活躍がうれしかったからだ。自分の気持ちが伝わるように発表した。

 スポーツ選手の記事を選んだ人もいれば、盛岡や岩手ならではの地域の取り組みを選んだ人も。興味、関心が一人一人違うことに驚いた。記事についての感想や意見を発表し合い、質問し合う体験はとても新鮮だ。

 「どうして県人の大谷翔平選手ではないの」「羽生選手は被災地への思いが強いよね。私も好き」など反応はさまざま。今まで知らなかったこと、気付かなかったことを、みんなの質問、感想から考えさせられた。

(増沢果乃)


望月善次実行委員長に聞く 裾野広げる大会に

「新聞を読み、広い視野を養ってほしい」と語るNIE全国大会盛岡大会実行委員長の望月善次さん(盛岡白百合高・高橋彩莉撮影)

 盛岡白百合学園高の編集委員会メンバー10人は8日、同校にNIE全国大会盛岡大会実行委員長で岩手大名誉教授の望月善次さん(76)を招き、大会開催への意気込みや教育に新聞を活用する取り組みの意義を聞いた。

(伊藤瑞希、井上栞、遠山桜=3年、五日市叶恵(かなえ)、高橋穂乃香(ほのか)、川村楓、箱山暖乃(はるの)=2年、菊池凜花(りりか)、高橋彩莉(あやり)、中野栞=1年)

 -盛岡大会を、どんな大会にしたいか。

 「東日本大震災の被災県から、スローガンの『新聞と歩む 復興、未来へ』を発信したい。また、大会はやって終わりではない。知見を生かした地道な活動につながり、裾野を広げるきっかけになることを期待している」

 -NIEに携わるきっかけは。また、大学教授の経験が生きることは。

 「NIEを研究していた学生を指導したことがあり知り合いの多くがNIEに関わっている。大学教授という職業のある種自由な立場は、新しい発想につながりNIEにも生きている」

 -今の学生と新聞の関係について、どう感じる。

 「ソーシャルメディアの発達で、若者は活字から離れてしまった。文字を読もうとしたとき、多くの人が読めるように書かれた新聞は非常に良い媒体。NIEで複数の新聞を読むことは知識を広げ、伝え方の違いを考えることにつながる」

 -NIEを通して学生に学んでほしいことは何か。

 「新聞は事実を伝えるものではなく事実を伝えようとしているものだ。切り口や表現が違うことで、同じテーマでも伝わり方が違うことを感じてほしい。複数の新聞を読み、広い視野でメディアに接する姿勢を身に付けてもらいたい」

 -新聞を教育に取り入れる意義は。また、NIEで意識していることは。

 「教育界と新聞界という異なった文化が手をつなぐことで文化が広がる。両者を理解することで、違う視点を学ぶことができる。また、新聞の情報量は多く、学校の学習だけでは分からない大きな文化を広く把握できる。日本の新聞と教育は世界に誇れるもので、両者の連携を考えている」

 -学校以外でもNIEが行われていると聞く。

 「企業が実施しているNIB(Newspaper in Business)や家庭で行われるNIF(Newspaper in Family)がある。人間力を高める活動の広がりを期待する」

 望月 善次氏(もちづき・よしつぐ)

 東京教育大大学院修了。岩手大教育学部教授、同学部長、盛岡大学長などを歴任。岩手大名誉教授。前国際啄木学会会長。76歳。甲府市生まれ。


■編集後記■

 盛岡商高 新聞通じた対話魅力

NIEを体験した盛岡商高新聞編集委員会のメンバー。(左から)森琴弥さん、菅原東紅さん、佐藤千尋さん、増沢果乃さん、浦田彩加さん、宇土沢光里さん

 「いっしょに読もう!新聞コンクール」を中心にしたNIE教室は、一線記者から新聞記事の読み方や写真撮影の方法を教えてもらい有意義だった。私自身「楽しかった。体験できてよかった」という予想外の感想を持ち、正直、自分でも驚いた。その楽しさは、さまざまなことを学べたから感じたのだろう。自分で選んだ記事について意見を交わし対話する。そんなに難しくないと考えていたが、これが意外と簡単ではなかった。

 最近、現代文の授業で劇作家、平田オリザさんの「対話の精神」を学んだ。あまり親しくない人同士の価値や情報の交換、これが「対話」だという。何げない「会話」はできても「対話」はなかなかできない。しかし、これは高め合っていくべき力だ。

 今回、記事について気軽に話し合えるようになると、自分の選んだ記事について考えが一層深まるように思えた。「そういう考え方もあるんだ。その発想を取り入れたらもっとよくなるかも」。そう考えられたのは記事を巡る対話の結果だ。また、疑問を見つける重要性も学んだ。

 「記者は、記事を書くために『分からない』と思ったことを根掘り葉掘り聞くこともある」という。その言葉通り、メンバーの発表に質問を考えながら耳を傾けると、話している内容をしっかり捉えることができた。「対話」から生まれるものの大切さ、疑問を持つことの大切さを学ぶ貴重な体験となった。

 自分たちの新聞作りを顧み新聞を作るには言葉の力が欠かせないと感じた。よりよい記事にするため対話を重ね、疑問を持ち続けていこうと思う。新聞は読むだけでなく、考えることも必要だと感じた今回の体験を今後の活動につなげたい。

(佐藤千尋)

 盛岡白百合学園高 人柄に接する面白さ

NIE全国大会盛岡大会実行委員長の望月善次さんを取材した(前列左から)箱山暖乃さん、川村楓さん、伊藤瑞希さん、井上栞さん、遠山桜さん、(後列左から)中野栞さん、菊池凜花さん、高橋彩莉さん、高橋穂乃香さん、五日市叶恵さん

 第23回NIE全国大会盛岡大会実行委員長で岩手大名誉教授の望月善次さんへの取材は、新聞の良さを再認識する機会になった。具体的で分かりやすくユーモアを交えた説明に、取材したみんなが興味津々。大学の講義を受けているような感覚を覚えた。同時に、人の話を聞き、文章に起こし、誰かに伝える取材活動の面白さを実感した。

 望月さんの話から、新聞は「真実が書かれている」と考えがちだが、実は筆者や編集者の切り口によって、伝わる事実が変わることが分かり、多くの新聞に目を通す必要性を学んだ。

 メディアの重要性を痛感したのは、住民が困難に冷静に対処できた東日本大震災と誤った情報が錯綜(さくそう)した関東大震災の比較だった。フェイクニュースが取り沙汰される現在、正しい情報を見極めることが大切だ。

 印象的だったのは「僕の視点では」「これが良いか悪いかは分からないが」と前置きして話す望月さんの語り口。謙虚な人柄がよく表れた話し方で、見習いたいと思った。

 多種多様な考え方があることを前提に、他の意見を受け入れる柔軟さも感じた。生徒が発言した言葉を拾う際や質問を受ける際も、否定することなく評価する受け答えが記憶に残る。

 インタビューを通し、人から話を聞く取材活動は、新しい知識を得るだけでなく、取材対象のバックグラウンドや人柄に接する面白い作業であることを実感した。一方で、良いコメントを引き出す質問を考え、読者を考えながら分かりやすい記事を書く難しさも学ぶ機会になった。NIE全国大会の号外制作や学校新聞づくりが、より良いものになると実感する体験だった。

(伊藤瑞希、井上栞、遠山桜)