名古屋市中区にある居酒屋兼産直「東北産直プラザ みちのく屋」は、東北の食の豊かさを広め東日本大震災からの復興を後押ししようと仙台市出身、岩手大卒の若林隆之さん(37)が立ち上げた。2011年8月の開業当初は名古屋市内で物販中心にスタートし、何度か場所を変えて、一昨年から現在の場所に移転。産直としてだけではなく、東北の新鮮な海の幸や地酒をゆっくり味わえる場所として多くの常連客らに親しまれている。

 店の前で存在感を示すのは、岩手県陸前高田市の松から作られた約4メートルの大きなテーブル。「プリプリ!ホタテの浜焼き」「特大 生ガキ」などの手書き看板に誘われてふらりと立ち寄る客も多い。

陸前高田市の松で作られた大きなテーブルが目を引く

 若林さんは岩手大卒業後、旅行会社に就職し名古屋市内に赴任。見聞を広めようと6年半務めた会社を退職し、海外を旅行していた際に東日本大震災が発生した。すぐに地元仙台市に戻り、がれき撤去などのボランティアに汗を流したが「長期にわたって続けられる自分なりの支援を」と、名古屋市に戻りみちのく屋を開業した。

 愛知県内に東北のアンテナショップがなかったこともあり、「名古屋で東北と言えばここ」と話題に。現在の店舗は、にぎやかな大須商店街の一角にあり、常連から一見さんまでひっきりなしに客が訪れる。店内で販売するのは魚や野菜などの生鮮食品や特産品、調味料、地酒などさまざま。店の目の前に置かれた大きなテーブルは、震災の津波による塩害で立ち枯れした陸前高田市の松をカットした特注品だ。

東北の特産品を豊富に取り扱う

 1人や2人で飲み始めてもいつの間にか「お隣さん」と話が弾み、仲良くなるケースも多いという。春日井市の会社員男性(49)は「東北の魚の鮮度やお酒の豊富さが最高で、下町風情の温かみも好き。テーブルで隣り合った客と話せる雰囲気がある」と笑顔。同僚4人と来店した名古屋市の会社員(50)は「新鮮な海の幸がとにかく美味しい」と満足そうだったが、食事をしながら「東日本大震災の時は何をしていたか」と話題になったという。「災害はいつどこで起きるか分からないので、助け合いの気持ちは忘れたくない」と力を込める。住田町出身で豊田市に住む男性(66)は「ここに来ると岩手のものが手に入るので名古屋に来た際はよく訪れている」と岩手県産の和菓子「ゆべし」を買い求めていた。

 震災から7年。日々店を訪れる人たちと東北の縁をつなぐ。若林さんは「東北の幸を美味しく食べて飲んでもらうことで、懸け橋になれればいい」と自然体で心を寄せる。