ノーマ・コーネット・マレックさんの詩「最後だとわかっていたなら」を取り上げ「大切な人を想(おも)う日」を提案する3月11日付岩手日報の広告とCMに、子どもたちは真剣なまなざしを向け東日本大震災の風化防止を考えた。

 横浜市戸塚区の秋葉小(垣崎授二校長、児童815人)5年3組(担任・石本健吾教諭、35人)は3月23日、総合的な学習の時間で取り組んできた防災学習の締めくくりとして震災の風化防止を学んだ。毎年この時期、震災の授業を行う6年3組担任の小川幸一教諭(43)がゲストティーチャー。本県の事例や岩手日報社の広告紙面、号外配布を教材に風化を問いかけた。

 小川教諭は約50枚のスライドや映像を用意。書物や電子媒体などの記録が津波で失われた状況を示した上で石碑や津波水位表を挙げ「記録があっても忘れることがある」と指摘。記憶や印象が年月を経るごとに薄れる「風化」の意味を説いた。

 「被災地の人々に寄り添いながら風化させない方法を考えよう」との呼び掛けに、児童は「日常の会話で取り上げる」「日記に書いて毎日見る」などと発表。

 震災遺構も考え、陸前高田の「奇跡の一本松」については「一本だけ残った木は津波の怖さと希望を伝える」とほぼ全員賛成。大槌町の旧役場庁舎に関しては「将来の防災教育のために賛成。外壁だけ残したらどうか」との意見のほか「多くの人が亡くなり、悲しい思い出しかないから反対」との発言もあった。

 小川教諭は、町議会の解体予算案可決を報じる16日付本紙を手に「町を二分し話し合われてきた。苦しい判断だった」と説明した。

 岩手日報社が全国各地で号外を配布する一方で、ネット上に「毎年、震災報道うっとうしい」と書き込まれていることも紹介。児童は「仮設住宅で苦しんでいる人がいるのに」「犠牲になった人に失礼」と語気を強くし「震災のつらさを知らない人が書いたと思う。みんなに震災を知らせなくては」との声も。小川教諭は「これも風化の一つ」と指摘した。

 お彼岸や関東大震災にちなんだ防災の日、世界津波の日などを例に、3・11を震災の記憶をつなぐための日にすることで一致。

 「最後だとわかっていたなら」の詩と大槌町の「風の電話」を題材にした岩手日報社のCMが画面に映ると、児童は一言も発せず、じっと見入った。

 「大切な人を想う日」に-との提案を小川教諭が読み上げると、教室には、震災について、風化防止について、用紙いっぱいに書き込む鉛筆の音が響いた。

「大切な人を想う日」、子どもたち賛同

3月11日に鎌倉市で配った岩手日報社員が配った号外の1面。小川幸一教諭は、授業に生かすため鎌倉駅前に駆け付けた

 小川教諭が震災の風化をテーマに授業を行った秋葉小の5、6年生から計57通の署名と感想が岩手日報社に寄せられた。

 児童の感想は「3・11は震災が起きたというだけではなく、たくさんの人が大切な人を亡くした日-と実感した」「明日が来るのが当たり前ではなく、一日一日の大切さが分かった」と自分の事として考える記述が多く、岩手日報の提言する「大切な人を想う日」に賛同。

 風化防止についても「震災を伝えることが自然災害への対応につながる」「風化を防ぎ、亡くなった人の思いを胸に生きたい」などとつづる文章が目立つ。

 感想を書き終えた5年3組の山口千華さんは「震災だけを思い出すのはつらいが、『大切な人を想う日』にすることで自然と震災を考える時間を持て風化防止につながると思う」とし、小島健翔(けんと)君は「休日にすることで、大切な人といられる時間ができる」と提案。

 森本伊織さんは「災害はいつ起きるか分からない。常に心に留め生活したい」と強調。豊島航輝君は「犠牲者や遺族の思い、東日本大震災の教訓を世代を超え未来へ、また世界へ伝えていきたい」と力を込めた。


 小川幸一教諭に聞く 横糸の新聞に縦糸の教育

 3・11に合わせ、毎年、震災に関する授業を展開する秋葉小の小川幸一教諭に震災学習の意義などを聞いた。

(聞き手 読者センター・礒崎真澄)

 -毎年、東日本大震災の授業を展開している。

 「森は海の恋人やかもめの玉子などを教材にしてきた。阪神大震災の時は大きなショックを受けたが忘れられている。東日本大震災は、後世に伝えたい。茨城県日立市の実家が全壊判定を受け震災直後ボランティアに参加できず悔しい思いをしたこともあり、震災をテーマにした授業づくりが自分の供養と考えている」

 -今回は「風化」を取り上げた。

 「これまでは『あの大震災』と言えば教師と児童に共通認識があった。だが、昨年の授業で、児童に震災の記憶がないと感じ、1年後(今回)のテーマは『風化』と決めた。横浜の『震災いじめ』は風化の最たるもの-とも思える。子どもは柔軟で、教師が教えれば理解する。例えば、津波の写真を見ると興奮して笑う子がいるが、事前に惨禍や被災地について教えればそうはならない。風化防止へできることがあればやるべきだ」

 -震災学習に被災現地の地元紙を活用した。

 「岩手日報は報道、全国での号外配布、広告など、風化に対し姿勢がぶれずストイックだ。伝えたいとの思いがこもった号外はしっかり受け止めたい。広告がメッセージ性の高い企画に取り組むことに驚いた。『名前を連ねられ誇りに思う』との協賛企業のコメントを見て、すごいと感じた」

 -新聞を使い、子どもたちに震災を伝える意義は。

 「神奈川でも災害は起きるし、将来、海辺で暮らす可能性もある。教育は未来への投資。今の子どもたちの次の世代で生きてくれればいい-とも考える。新聞は広がりを持つ横糸、教育は時間を超えつながる縦糸。新聞を使う意義は大きい」