岩手日報朝刊で2015年4月から連載スタートした4コマ漫画「イワさんとニッポちゃん」は、この4月で4年目を迎えた。作者の漫画家そのだつくしさん(46)=雫石町在住=は「こんなに長く続くと思っていなかった」と驚きながらも「さまざまな年代の方が読んでいるので反応も楽しんでいる」と手応えを語る。4月からは過去作品が電子書籍として発売されるなど、紙面の枠を超えてますます「生き生き」と躍動する個性豊かなキャラクターたち。そのださんに、作品に対する思いや連載の裏話を聞いた。

―連載が4年目に入りました

 実は新聞に4コマ漫画を連載するのは「あと20年後くらい」の夢だったんです。それが、この年齢でかなってしまって老後の計画が崩れました(笑)。しかも当初は1年契約だったので、こんなに続くとは思ってもいませんでした。今では、たくさんの方からファンレターや感想をいただき「そういう捉え方もあるんだ」という発見もあります。新聞って本当にいろいろな年代、立場、考えの方が読んでいますよね。皆さんのリアクションも楽しませていただいています。

―連載を描くうえで気をつけていることはありますか

 政治などの難しい内容は他の記事で読んでいただくとして(笑)。あまり社会情勢などは触れず、ほのぼのとした日常のエピソードを描くようにしています。ときどきは時事ネタも入れますが、良いことも悪いことも含めて「ニュートラル」な立場で描こうと心掛けています。新聞は読者層が幅広いうえ、4コマで説得力を持たせなければならないですから大変です。表現が偏らないよう心掛けています。

 もちろん「小中学生でも分かるように」ということは意識していますが、具体的な読者のターゲットは設定していません。幅広い年代の方が読んでいることを逆手にとって、子どもが分からない難しい言葉は親に聞いてもらう、逆に年配の方が分からないカタカナ言葉は子どもに聞いてもらうなど、漫画を通じて家族の会話が増えたらいいなと願っています。岩手ならではの風習や行事もなるべく盛り込むようにしているので、「どういう意味だろう」と調べてもらいたい言葉は、私から読者への「宿題」のつもりで描いています。

―クールな「イワさん」、天真らんまんな「ニッポちゃん」を初め個性的なキャラクターが躍動しています

 タネ明かしをすると、あのキャラクターたちは「岩手県そのもの」なんです。岩手はとても広くて、内陸と沿岸では風習や考え方も違いますよね。キャラクターの出身地も偏らないようにしたいと考えました。

 作品の基本的なストーリーは、宮古市出身のイワさんが東日本大震災で家族を失い、歩いてたどり着いた盛岡市で、ニッポちゃんや人間の一家と交流を重ねていく様子を描いています。出身地ごとの個性の違いをキャラクターに反映させているんです。さらに、人間一家は小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまで3世代。読んだ方が、キャラクターの誰かに自分を重ね合わせてもらえればうれしいですね。

-震災を物語に組み込むという想定は、やはり最初からありましたか

 ありました。私自身は内陸にいて被災はしていませんが、震災後は沿岸の学校や学童に何度も足を運んで、ひらすら子どもたちに似顔絵を描いていました。私は「漫画は人から始まる」と思っているので、これまでたくさんの方と出会って感じたことを、いつか作品にしなければという使命感は持っています。「イワさんとニッポちゃん」も3月11日の紙面はいつも悩みますね。最初の年(2016年)は親を失ったイワさんの落ち込んでいる内面も描きましたが、だんだん表現はシンプルになりました。余計なことは描かず、大切なことだけ。年を重ねるごとに、イワさんの「心の復興」も描けているのではないかと感じています。

-4コマ漫画から始まった作品ですが、「コミックいわてWEB」に特別版が掲載されたり、電子書籍が発売されたりと展開が広がっていますね

 ここまで広がるとは驚きです。ファンの方の中には、イワさんやニッポちゃんを「擬人化」した絵を描いて楽しんでいる方もいて、すごいですよね。今度「イワさんにそっくりなネコ」の写真を募集してみようかな(笑)。電子書籍も県外の方にも気軽に読んでいただけるのでうれしいですね。

-先ほどは岩手日報社内で紙面制作の現場を見学していただきました

 面白かったです。想像以上にデスクがきれいでびっくりしました。見出しを付けたり、レイアウトを組んだりするのはやはり遅い時間なんですね。私は連載中、ネタに困ったことは一度もないんです。次々アイデアが湧いてくる。でも制作現場を見学して、漫画が載っている「社会面」は夕方から作られると分かったので、もう少しギリギリの時間に原稿を出しても・・・。

-それは困りますが(笑)、ネタに困らないとは心強いですね。今後の展開が楽しみです

 これからは、物語の中に張り巡らせてきた「伏線」を少しずつ回収していきます。ニッポちゃんはなぜ箱の中に入って捨てられていたのか。あの一家の名字は何なのか-。ナゾに包まれている部分を明らかにしていきます。一家の名字は、読者の皆さんから募集してみるのも面白いですね。私自身も今後の展開を楽しみながら、描いていきます。

電子書籍に関してはこちら(連載1000回突破記念の特別編、無料公開中)
http://books.iwate-np.co.jp

作者プロフィール
そのだつくし
1996年集英社デビュー。雫石町在住
「ずったり岩手」(銀杏社)http://www.manga-gai.net/ほか
「ずったり岩手」第325話イワニツの巻
http://www.manga-gai.net/manga/zuttari/325/01.html
「コミックいわてWEB」ではイワさんとニッポちゃん外伝掲載中