「早く狭い仮設を抜け出して広々とした家でゆったりと暮らしたい」。東日本大震災で現在も仮設住宅で暮らす被災者100人を対象に行った岩手日報社のアンケート調査で、6割以上の世帯が震災から7年経過する中でも自力再建を目指して仮設住宅で我慢の生活を続けていることが分かった。宅地造成の遅れが要因の6割を占め、被災地の実情と合わない現在の条例が工事の遅れにつながっている。全ての被災者が安心した生活を取り戻すにはまだ時間がかかる。
 
 当初の住宅再建手法の質問に対し「自力再建」は69人、「災害公営住宅」は23人と大半を占めた。現在予定している再建手法も「自力再建」は63人、「災害公営住宅」は26人と当初予定からほぼ変わりはない。その他も「賃貸」が3人、「見通し立たず」は4人と、年齢や資金面を理由に今でも再建を悩む世帯もいた。
 
 住宅再建の手法について聞いた意見では「岩盤の固さなど土地のことをよく知る住民や識者の話を聞くべきだった」「防潮堤や水門などよりも宅地整備を優先してほしかった」などの声が寄せられた。

 退去できない理由について100人中60人が「宅地造成の遅れ」と回答した。被災が大きかった自治体のほとんどが高台や市街地をかさ上げする造成工事に土地区画整理事業(区画整理)、防災集団移転促進事業(防集)を活用したが、地権者との交渉時間や膨大な土木工事などの理由で整備が遅れ長期化している。
 
 「例えば全て防集で宅地造成すれば、区画整理よりも早く完成するだろう。しかし、そうなると土地のかさ上げができない。浸水区域の広大な土地利用が問題になる」。陸前高田市の熊谷正文復興局長は事業を活用した経緯を語る。
 
 防集は浸水した土地を自治体が買い上げ、高台の造成地に被災者が自宅を再建する事業。土地のかさ上げが必要ない分、区画整理よりも早期に完了するが、買い上げた土地災害危険区域に指定された場合、居住はできなくなる。
 
 再び同じ地に街を再開発するなら現状で区画整理は必須だが、同市の区画整理区域内の地権者は約2千人。相続手続きが済んでいない土地や、地権者が市内在住とも限らず、職員が九州まで行くこともあった。事業の加速化のため国に対し、自治体が一時的に借地権を設定するなどの特例措置を再三求めたが、国は「財産権に抵触する恐れがある」と応じなかった。
 
 阪神大震災で被災した多くの自治体も再生を区画整理に託したが、事業完了までに時間がかかり、震災前からの課題だった人口減と産業の衰退に歯止めをかけられなかった事例もある。長期化の一因は被災差による住民の合意形成の遅れだった。
 
 工事の迅速化は限界があり、早期完了を目指す場合は素早い合意形成と計画策定が重要になる。
 
 熊谷局長は「例えば地域住民の9割が賛成した場合は土地の制限をかけられるなど災害時の特例はどの地域でも必要になるだろう。一人一人の合意を得ることは並大抵のことではない。住民がどのような住宅再建を考えているのか、意向確認が何より重要。事業の規模感の早期把握につながる」と今後の災害に備えた対策の必要性を語る。

 【調査方法】昨年12月末時点で応急仮設住宅(みなし仮設含む)がある10市町の入居者100人に、1月下旬~2月中旬にかけて直接面談方式で行った。各市町の入居者数に応じ、沿岸91人、内陸9人に実施。男性47人、女性53人。データは小数点第2位で四捨五入しているため合計が100にならないことがある。