盛岡市の仙北中(川村孝一校長、生徒602人)は、全校で新聞活用に取り組んでいる。国語など教科の授業に加え、生徒が主体となったスクラップ活動や学校新聞づくりを展開。昇降口前のNIEコーナーにはこの時期、平昌(ピョンチャン)五輪の活躍を伝える各紙の紙面が張られ、社会の今に生徒らの関心も高まる。みずみずしい感性と新聞が出合う工夫がちりばめられている。

3月初め、1年6組(31人)の国語の授業。根拠を明確にして書いた意見文を、グループ代表10人が発表した。その際、新聞や本からの情報、自身の体験を基にした。

新聞各紙の平昌五輪の記事を紹介するNIEコーナー

学習指導要領改定の報道から「主体的・対話的で深い学び」について触れた藤村明煕(はるき)さんは、その狙いを読み解き、自校の新聞活用の学びを通して説明する力などが付く利点を挙げた。「生活する上でコミュニケーションの力は大切。早い時期から身に付けるように学習機会を増やしてほしい」と結んだ。

県内高校生のスマートフォン利用状況や、人工知能(AI)が身近になる近未来についての報道、五輪出場選手の行動から自身の生き方に思いをめぐらせた生徒もおり、それぞれ共感を呼んだ。

佐藤凜々花(りりか)さんは東日本大震災発生時、福島県郡山市に住んでおり、原発事故の放射性物質による被ばくを避けて転居した体験を交えて発表。「未来のために安全な日々をつくり上げるのが日本の課題だ。原発が無くなる日を願っている」と語った。

一つの科学記事から肌の色の違いによる人種差別、いじめ問題へと論を展開した佐々木健人さんは、発表を終えて「新聞を読むきっかけになり、他の人の意見を聞くいい機会になった」と話す。

授業は、根拠のある意見文を書くために▽新聞投稿欄の文章の分析▽関心を持った記事の選択▽原稿作成▽グループ交流―などの過程を経て行った。「私たちの声を県民に伝えよう」と、実際に投稿する予定だ。

指導する国語科の長根いずみ教諭は「報道記事や論説文、コラムなどさまざまな種類の文章が新聞に掲載されている。読みこなすことで、すべての学習の基となる読解力、さらには書く力も確実に身に付く」と狙いを語る。

同校は、教科横断的に盛岡の先人について学んだことを個人新聞にしたり、古典のまとめとして学習新聞を作成する活動などにも取り組んでいる。

スクラップや意見交流 生徒の主体性大事に

掲示板に張られた学校新聞やスクラップを見る生徒

 仙北中の新聞委員会は、朝読書の時間を生かして新聞スクラップ活動に取り組んでいる。生徒一人一人が「心に残った記事」を探し、内容や意見をシートに書き込む。グループ内で感想を寄せたり、ミニスピーチ風に発表するクラスも。学校新聞の発行にも力を入れており、生徒が意欲的に「新聞文化」を盛り上げている。

2年1組では1月下旬の朝、スクラップの発表が行われた。班ごとの代表6人が次々と前に出てスピーチ。経済、スポーツ記事から、盛岡に珍鳥が飛来した話題まで多彩な内容が紹介された。わずか10分間ながらテンポよく進み、聞く側の生徒はクラスメートの意見に耳を傾け、自身の考えを深めた。

スクラップは年4、5回の各1週間、全校で取り組んでいる。作成したスクラップは、階段の踊り場に一部が掲示され、新聞委員会による学校新聞「紫紺(しこん)」も発行ごとに重ねられている。

新聞委員会は、各クラス2人の代表で構成。委員長の曽根田和史(そねだかずふみ)さん(2年)は「新聞は情報が丁寧に書かれ、自分が好きなときに読める良さがある。校内新聞では自分が書いた記事をみんなが読んでくれるのが励み。仙北中の伝統を継承していきたい」と張り切る。

長根いずみ教諭に聞く 驚き満ちた最高の教材

 日本新聞協会認定のNIEアドバイザーでもある長根いずみ教諭に、新聞活用の狙いを聞いた。

新聞は、社会の生の出来事を報道している。紙面は感動や驚きに満ちており、人の心を引きつける力がある。多くの情報があふれている現代社会にあって▽確実な情報を選ぶ力▽それを基に考えて発信する力▽生きていくための思考力、判断力、表現力―を身に付けるために最高の教材だと思う。

教育現場で活用するためには、生徒が興味を持ち、楽しく主体的に取り組める時間を設定するのが良いのではないか。本校では新聞委員会が中心となって朝読書の時間にスクラップ作りに取り組んでいる。生徒会総会で「もっと活動時間を増やしてほしい」との意見が寄せられるなど、生徒が向上心を持って励んでいる。作成したスクラップ記事を授業で活用していくのも一つの方法になるだろう。

私自身、小学生のころにガリ版で個人新聞を発行するなど、新聞が好きで常に身近に感じてきた。記事を読んで涙を流し、心揺さぶられた経験を味わってもらいたい。新聞に触れる環境があれば子どもたち自身がいろんな発見をする。

(談)