「第3回NIE教育フォーラム・読む力で育む学び」(日本新聞協会主催)は3日、東京都千代田区のプレスセンターホールで開かれ、NIEを実践する3人が基調講演や実践報告を行った。全国の教員、図書館司書、新聞関係者らが「NIEの図書館との連携、新聞活用による主権者教育、情報を読み取る力の育成」について考えた。

 フォーラムは、約100人が参加。慶応大文学部教授で日本図書館情報学会副会長の倉田敬子さんが「大学生と情報リテラシー」と題し基調講演した。

 知識を補う効果

「新聞により異なる報道で視点の違いを発見できる」と説明する倉田敬子さん

 倉田さんは、大学1年生がリポート作成の際、「『問い』を立てられない」「背景知識がなく学術論文が読めない」点を指摘。学生に配る文献に新聞記事を加えるといい「この点を補うのが新聞。識者のコラムや問題に対する賛否の意見を掲載している。情報リテラシーを養うのに効果的だ」と説明した。

 また「ニュースアプリは流れてしまい活用が難しいが、新聞は10年、20年前の情報を追うことができ分析の対象としやすい」と新聞の利点を解説。その上で、学生が紙の新聞を読まないことに「流れ続けるネットニュースから関心のあるものだけを取得する手法では得る情報が偏る。情報ネットワークが発展した現在、重要な役割を持つ新聞の新しい形が課題だ」とした。

 積極的学習観に

「子どもたちが日常的に新聞を読むことが大切」と語る片岡則夫さん

 実践報告は2人が登壇。大阪府河内長野市の清教学園中・高教諭で同校の図書館リブラリア館長の片岡則夫さんは「学校図書館と連携したNIE~探究学習を支える新聞情報」と題し報告した。総合的な学習の時間を使った探究学習や中学3年の卒業研究、高校3年の卒業論文で、新聞がリポートのテーマに活用されている事例を示した。

 「新聞は世界から消えてしまわないだろうか 活字の力は時代を超える」(中3女子)、「新聞購読者はなぜ減り続けるのか-その魅力を見つめなおして」(高3女子)などのリポートを紹介。「子どもたちは、新聞の持つ一覧性や情報の多様性、紙面の中で偶然の出合いがあることに気付き紙の形を守ってほしい-との思いも持ったようだ」と語った。

 「新聞記事はコンパクトでキーワードが詰まっており研究に役立つ」と強調。新聞を読んでいる生徒がNIEの授業に高い関心を示した独自アンケートを基に「図書と新聞を読む習慣が、積極的な学習観を培っている可能性は多分にある」と確信を持ち語った。

 学校全体で活用

「現実社会を知り考える、新聞を読む場をつくることは学校教育の大切な役割」と強調する黒崎洋介さん

 横浜市の瀬谷西高教諭の黒崎洋介さんは「主権者教育とNIE~次期学習指導要領を見据えて」をテーマに実践報告。次期学習指導要領の「資質・能力の育成」を「18歳段階で何ができるようになるか」とし、キャリア教育と主権者(シチズンシップ)教育の重要性を説いた。

 前任校で総合的な学習の時間を「シチズンシップ」と名付け行った教科横断的なカリキュラムマネジメントを紹介。1学年の早い段階で新聞の読み方講座を行い、紙面構成、記事の種類・構成を学び、複数紙読み比べ、新聞記事から情報を得た模擬議会や模擬投票、ディベート、公共的課題をテーマにした投稿、ポスターセッションにつなげた。

 新聞活用について黒崎さんは「①情報収集の手段②学習した知識・技能を実社会の出来事で確認-の二つの使い方がある」と解説。「読み方講座で各教科で新聞が使えるようになる。学校全体で活用することが、生徒を現実社会につなげ、『学びの意味』を発見させることにつながる」と力を込めた。

 本県から参加した一関市・磐井中の菊池朋嗣さんと川島善広さんは「教科書で学んだことを現実社会につなげ体験する上で、新聞活用が有効であることを再確認できた。争点を扱う記事なども活用してみたい」と、実践者の報告を受け止めていた。


新聞に親しむ学校へ 司書ら活動法学ぶ

新聞スクラップやNIEコーナーについて学ぶ八幡平市の学校図書館司書ら

 4月から市内全14小中学校の学校図書館に新聞配備を検討している八幡平市教委は、日本新聞協会認定NIEアドバイザーで盛岡市・仙北中教諭の長根いずみさんを招き学校図書館司書対象の研修講座を行った。

 長根さんは「学校図書館とNIEの役割について~学校図書館司書に求められること」と題し講義。各紙の1面トップや気になった記事を張り出すNIEコーナーの設置や、家庭も巻き込んだ全校スクラップ、リオデジャネイロ五輪の読み比べ、新聞作りの実践、新聞委員会の活動など同校の取り組みを紹介した。

 図書館としての取り組みについて、新聞の張り出しを中心としたNIEコーナーの設置を勧め「『最近のニュース』といったタイトルで、見出しや感想を付けて張り出すところから始めるといい。興味のあるところから取り組むことが大切だ」とアドバイス。スクラップについては、各クラスに任せることや新聞委員会の活動の有効性を説いた。

 研修には、学校図書館司書の高橋みなきさん(26)、伊藤理良さん(22)、図書館司書の有資格者で教育相談員の大星栄子さん、高畑嗣人教育指導課長ら6人が参加。高橋さんと伊藤さんは「新聞記事の感想の書き方など参考になった」「子どもたちが新聞と触れ合い、授業にも活用できるように先生と連携していきたい」と意欲を見せた。

 大星さんは「子どもたちの興味関心がゲームやネットに向いている現在、文章を読み、考える姿勢が広がってほしい」と期待。高畑課長も「新聞を情報として整理し授業に結び付け、新学習指導要領にある『社会に開かれた教育課程』につながってくれれば」と司書の活躍を見守る。

 講義を終え、長根さんは「工夫を凝らした前向きな司書活動を行っていて素晴らしい。NIEも取り入れ、授業との連携や情報センターとしての機能づくりを学校ぐるみで取り組んでほしい」とエールを送った。

小中図書館に新聞配備 八幡平市方針

 八幡平市教委の新聞配備は「情報センター」としての図書館機能の充実が狙いだ。10小学校に各1紙、4中学校に各2紙を配備し国の第5次「学校図書館図書整備等5カ年計画」にかかる地方財政措置で賄う予定。

 同市では、有資格の図書館司書2人が全小中学校を回り、本の修繕や本棚の整理、「お薦めコーナー」の整備など、児童生徒が本に親しむ環境づくりを行っている。新聞の図書館配備に伴い▽新聞閲覧コーナー、記事紹介コーナーの設置▽カテゴリー別の新聞スクラップの作製-を予定。

 市教委は、司書と教師の連携による新聞を活用した授業改善や主権者教育につなげたい考えだ。

 学校図書館のNIE導入は全国で進んでおり、記事紹介や児童生徒の情報収集支援、テーマ別ファイルの作製、探究学習への利用など工夫を凝らした取り組みが行われている。