「南海地震は必ずおこる」-。校門をくぐると、大きな看板が目に飛びこんでくる。高知市中心部の潮江(うしおえ)中(坂本昌二校長、生徒400人)は、東日本大震災が発生した2011年、防災教育を柱にした学校づくりを始めた。

 同校が掲げるのは、マグニチュード(M)9クラスの南海トラフ巨大地震・津波を想定した「地域貢献型防災教育」。「自分の命は自分で守る」意識に加え、「地域住民の命も守る」啓発活動に力を入れる。

 学区は、太平洋に面する浦戸湾に接し海抜約70センチ。南海トラフ巨大地震が発生した場合、過去に湿地帯だった地域は2メートル程度の地盤沈下と最大2~3メートルの津波が想定されるという。1946年の昭和南海地震(M8)では地盤沈下と4~6メートルの津波により1カ月間水没した記録が残っている。

 防災教育中心の学校づくりは、希望者による「防災プロジェクトチーム」立ち上げで本格スタート。最初の活動は、3年生が調べた地震対策を11の防災ポイントにまとめたポスター「地震に注意~南海地震は必ずおこる」の作製だった。3千枚印刷し、地域への配布や地震出前授業を展開した。

1年生の作った防災はがき新聞を見ながら、防災プロジェクトチームの活動を振り返る(左から)武井夢志さん、酒井美衣奈さん、吉門未唯菜さん、北岡楽夢さん

 校内の取り組みとしては1年生の集中プラン。入学後間もない5月の3日間、津波などからの避難先となる筆山(ひつざん)(118・3メートル)への避難路12ルートの実地確認や地震、津波、豪雨対策の防災講演会、救急法や放水訓練などを実施する。

 まとめは、はがき新聞に。命を守る大切さや救急法のポイントなどを限られた字数の中で端的にまとめクラスメートらと共有する。

 2、3年生は、取材の手法を取り入れたアンケートを実施。2年生は職場体験に合わせ、訪問先の企業で備えを学ぶとともに、啓発活動に努めてきた。

 幼稚園、保育園、小学校への出前授業や地域の防災イベントなどに参加するプロジェクトチームは16年度、全校生徒と学区内3小学校の6年生、計約600人に呼び掛け、防災アンケートを実施。736世帯から回答を得て、地域防災力の向上に一役買っている。

 また、昭和南海地震経験者から聞き取り、年度末の全校集会で発表。過去の大災害から得た教訓を校内に広げている。

 坂本校長は「聞き取りやアンケートを分析し、自分の言葉で発表、説明することは、自らの活動を振り返ること」と強調。「そこで得た自信は、防災に必要な地域の人々とつながる絆に結び付く」と意義を語る。

 取材、新聞作り幅広く

聞き取り取材やアンケート、かるたの作製など、潮江中の防災教育の取り組みは幅広い

 潮江中の防災の取り組みは多岐にわたる。空き教室を利用した防災展示館は▽学習▽地域コミュニティー▽提案・創造-機能を備え地域に開放。高齢者宅の家具固定ボランティア、避難所かるた製作など幅広く、昨年10月からは、地域との絆を強めるため資源・不燃ごみ収集日の分別支援を始めた。

 防災プロジェクトチームは2011年、3年生9人でスタート。地域防災の取り組みが評価され14年に総理大臣表彰を受けた。毎年20~30人が参加し本年度は28人。3年生は活動の有効性を実感している。1年時から続けてきた酒井美衣奈さんは「地域のお年寄りに昭和南海地震の話を聞いたことが印象的だった。南海地震はまた必ず来る。新聞などを読んで知識を深めたい」と力を込める。

 2年生から加わった武井夢志(むさし)さんと吉門未唯菜さんは「高校では、防災に関しみんなを引っ張る存在になりたい」「体育教諭を目指しているが、子どもたちを災害から守るように、地震・津波対策を伝えていきたい」と経験を地域の防災に役立てる意気込み。

 北岡楽夢(らむ)さんは「新聞には防災について学ぶ記事が多い。これからも読んでいきたい」とした上で「全校生徒をもっと巻き込んだ活動に発展させてほしい」と後輩にエールを送った。


 坂本昌二校長に聞く 地域貢献を柱に防災教育

 潮江中の防災教育に当初から携わってきた坂本昌二校長に、活動の意義を聞いた。

(聞き手 読者センター・礒崎真澄)

 -「地域貢献型防災教育」とは。

 「防災教育は、避難の方法を覚えることだけではない。いかに、避難後の復旧、復興の担い手になるか-を教えること。自分が育ち、住んでいる地域に愛着を持ち、地域との絆が強くなければ復興は担えない。そして『生きる力』そのものでもある」

 -防災プロジェクトチームが中心の活動だ。

 「『地域貢献型』を掲げるとき、全校生徒の取り組みでは効果が見えにくい。生徒が考え、行動することを考慮して毎年、希望者を募り組織し、学校からの発信を心掛けている。幼保小への出前授業や地域との交流を展開している。また、プロジェクトチームから全校に広がることを期待している」

 -NIEともリンクしている。

 「1年生ではがき新聞を取り入れている。防災は『命をつなぐ学習』。各教科領域で取り上げることが可能だ。体育では応急処置、家庭科では非常食。命を考えたとき道徳でも扱えるし津波の到達速度は数学、液状化は理科など、カリキュラムマネジメントで系統性を持たせていきたい」

 「実践指定校になった2013、14年度は『新聞に載る』『新聞で学ぶ』『新聞を作る』の3本柱で活動した。特色ある活動の掲載が生徒の自己肯定感を高め、図書館教育と連動、自分の言葉を文字にし交流する活動ができたと思う」

 -潮江中の防災教育の今後は。

 「地域貢献型の考え方はぶれない。非常持ち出し袋作りを全校で行い、生徒と家庭の防災意識の向上にもつなげている。校内で充実させ、地域との連携を密にしていきたい」