子どもたちが、目を輝かせ新聞の読み聞かせに耳を傾ける。北上市の川岸保育園(伊藤典子園長)のホール。「新聞であそぼう」の時間が始まった。

 指導に当たるのは、7月のNIE全国大会盛岡大会に参加する同市の教育委員で元黒沢尻東小校長・高橋きぬ代さん(66)と地域でNIEを実践する「ぴぴっと(PPT)研究会」メンバーの高橋裕子さん(61)、武石恵美子さん(57)の3人。

 年長組の30人は、導入の読み聞かせで、武石さんが手にする盛岡市動物公園の臨時開園を報じる岩手日報の地方欄に興味津々。

 武石さんが記事をかみ砕き読み聞かせ、子どもたちの輪に入り「どんな動物がいるかな」と問いかけると、紙面をのぞき込み「ぞうさん」「おさるさん」と声を上げた。次はイチゴ狩りの記事。「赤い」「おいしそう」など笑顔が広がった。

 読み聞かせの後は、一人一人が新聞を使う「写真で絵を描こう」。裕子さんが「一番、気に入った写真を選んで、切って、貼って、写真にあった絵を描いてね」と新聞を配る。

 園児はホールいっぱいに広がり、一枚一枚、丁寧にめくり始めた。にこにこと写真を目で追いながら、時々、小さな手を止め、真剣な表情に。数分たつと、はさみで切り抜き、紙に貼る子がでてきた。

 大船渡市三陸町の小正月行事・スネカや盛岡・高松池に現れた渡り鳥オオホシハジロ、米国アニメ映画イベントの広告など、紙に貼られた写真はさまざま。

新聞の写真に絵を加えた作品を紹介する園児

 スキーヤーの写真にコースを描いたり、テニスプレーヤーの周りにコートや観客席、自分の姿を添えたり。小説の挿絵から空を飛ぶ魔女をイメージする子やミス日本の上半身の写真にドレスを描き込む子も。子どもたちは想像力を働かせ、思い思いの絵を描いた。

 山下蒼真(そうま)ちゃん(6)、及川七美(ななみ)ちゃん(6)、征矢心結(みゆう)ちゃん(5)の3人は「写真を見つけるのが難しかったけど、お絵かきが楽しかった」「家でもやってみたい」と笑顔をみせた。

 ぐっと集中した後は、体を動かす「しっぽとりゲーム」。新聞紙を細長く切って作ったしっぽを取り合うゲームに子どもたちの歓声が上がった。

 伊藤園長(50)は「1時間40分、子どもたちは集中力を切らさない。小学校に上がる前に文字や数字に触れるいい機会になっている」と効果を実感している。

就学へつなぐ活動に

 川岸保育園の「新聞であそぼう」は、北上市の幼保小連携の取り組みの一環として始まり5年目。新聞紙を使った遊びにとどまらずNIEの要素を取り入れて「学ぶ力」や「人とかかわる力」「生活する力」を養っている。

 毎年3回行われ、リーダー的な立場の高橋きぬ代さんは「活動後の感想発表は、3回目がぐっとよくなる」と効果を実感する。

 新聞を使った活動には、それぞれ狙いがあり、毎回行われる読み聞かせは聴く力、顔写真や文字・数字を探す活動は、視力、触覚、認識力、集中力、写真を基にした絵画では創造力が加わる。

 頭を使った後の運動でも、数や面積、長さ、協調性など一つ一つの動きに意味を持たせている。

 読み聞かせ担当の武石恵美子さんは「絵本の物語とは違う新しい体験で、想像力を働かせながら聞いているようだ」と実感。

 高橋裕子さんは「新聞のめくり方も上手になった。(写真を)自分で選び絵を描く作業で心が広がる」と説明する。


 高橋きぬ代さんに聞く 自由な発想つくりだす

 保育園で行うNIEの活動の意義や効果を高橋きぬ代さんに解説してもらった。

 活動は年3回と少ないが子どもたちは毎回、興味を持っていることが分かる。

 新聞は情報量が多く、自由に発想できる環境をつくりだす。就学後は幼いながら評価を気にするようになるため、幼稚園や保育園の年長の子どもが一番、成長する姿がよく見える。

 写真や文字などいろいろな要素を探し、少しよく考え焦点を絞り、自分の思いを形にする。絵を描くにしても、自分や父母、動物など、意味を持たせてのびのび描いている。

 数や言葉を覚えるなど、小学校の学習に直接結び付くものではない。だが、数を量的に捉えることは数字を支える認識の下支えになるし、文字は国語につながる。読み聞かせは、興味を持って想像しながら聞く態度を身に付け学習に入りやすくなる。

 気持ちの上で「できた」と感じることで、深く思考する子どもづくりにつながってほしい。また、知的な遊び、親と新聞を見る機会ができればうれしい。

(談)