2015年のNIE全国大会開催地・秋田市で全国高等学校国語教育研究連合会第51回研究大会兼第64回東北地区国語教育研究協議会秋田大会(11月16、17日)が開かれ、秋田県内の3校が新聞活用の取り組みを発表した。聖霊女子短大付属高は社説を読み比べる現代文の授業を公開し、秋田南高と横手高が研究発表を行った。全国大会から4年目の同県。NIEが根付き、生徒が学びを深めている。

聖霊女子短大付属 比較読みで言葉学ぶ

五輪社説を題材に

 秋田市の聖霊女子短大付属高普通科国際コース2年生29人の授業は「オリンピックから日本を考えよう」がテーマ。2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催決定を受けた全国紙2紙の社説(13年9月10日付)を取り上げた。

 一方は、招致成功に向けた日本の取り組みを紹介し開催効果の遺産(レガシー)を経済成長と主張。もう一方は課題を指摘しつつレガシーを国民の教養とし一人一人が東京五輪の意味を考えることを訴える論調だ。

 比較読みは、4時間で構成。1時間目は2グループに分かれ、それぞれ1紙を読み、どう受け止めたかを話し合った。経済成長をレガシーとする社説を読んだグループは論調が「前向き」と感じ、他のグループは課題の指摘に「後ろ向き」な印象を受け、書き方により伝わり方が大きく異なることを学んだ。

 2時間目は、二つの社説から受ける印象が異なる点の根拠を、見出しや語句、表現に着目し読み取り、意見交換する授業。「景気」「汚染水、復興」「遺産」という両方の社説に登場する三つの言葉について捉え方が違うことに気付いた。

文章構成読み解く

 公開された3時間目のテーマは「二つの社説を比べ読みして主張の違いを読み取ろう」。中島康子教諭は、五輪開催に肯定的な部分を赤、課題を指摘した部分を青、経済に関する部分をピンク、汚染水・復興関連を黄色、遺産部分を緑に色分けし、全ての段落に番号を付けた二つの社説の全文を張り出した。生徒は三つの言葉について、主張の根拠となる言葉や表現を段落番号を示しつつ発表した。

 意見の交流を通し、首相発言の引用や課題の列挙に続く提言が、主張を効果的に強調する文章構成と学び「後ろ向き」と感じていた課題が実は「未来に向けた遺産」の提示と気付くなど、言い回しにより変わる言葉の意味合いを読み解いた。最終の4時間目は、岩手日報や東京新聞、福島民報など地方紙を読み、全国紙との視点の違いに接した。

新聞は最適な教材

 森井美雪さんと渡部絢子さんは「言葉の使い方で読み手の印象が大きく変わることが分かった」「一つの情報をうのみにせず、多角的な視点を持つ大切さを実感した」と振り返った。

 本県から参加した住田高の三浦天豪(てんごう)教諭は「多くのポイントを示すことで、生徒の批判力を培っている」とし、盛岡商高の熊谷知暁教諭は「たくさんの見解の違いに対する国語的なアプローチが参考になった」と熱心に参観していた。

 アドバイザーを務めた秋田大大学院の阿部昇教授は「データ、事実を根拠に論を展開する新聞は比較読みの教材として最適だ。5年前の記事だが五輪はこれからで生徒にとって身近な話題。良い記事を選んだ。教材研究の成果が出ている」と評価した。

秋田南 「羅生門」の発展学習に

 文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されている秋田市の秋田南高・伊藤史教諭は「情報と主体的に関わり、論理的な批評力を育成する授業の実践」と題して研究発表を行った。

 伊藤教諭は新聞を活用した「羅生門」の発展学習などを発表。発展学習では、戦後の食糧難時代に起きた「判事餓死事件」の第一報と反響記事を使い、極限状態の行動について善悪や可否を生徒に考えさせた。

 第一報は生徒全員が読み感想と意見を書き、反響記事については、あらかじめ2グループに分け、一方には肯定的な記事、他方には否定的な記事を配布。協議し批評を書かせた。

 生徒は、善悪の判断基準が絶対ではなく、他者の意見が自分の意見に影響を与えることを実感。複数の情報を比較し、情報の妥当性を吟味する重要性を学ぶ成果につながったという。

 伊藤教諭は「生徒にとって新聞は自分と社会をつなぐ窓口」と力を込めた。

横手 スクラップ生かし対話

 横手市の横手高定時制課程・松江正彦教諭は「調べ、考え、書くための『NIE』」をテーマに研究発表した。

 同校のNIE活動はコミュニケーション能力の育成を狙いに2012年に始まり、スクラップを工夫を重ねながら続けている。17年には「コメントに対して、他者に意見を書いてもらう欄」を設け、記述依頼が交流を生む効果が表れた。教師のつながりを生かした他校とのスクラップ交換は、生徒に刺激を与えている。

 また、市内の「旅の達人」にインタビュー取材し学校新聞に投稿する活動を展開。質問を練り掲載された文の特徴を考えることは日常のスクラップのコメントに生かされているという。

 松江教諭は、新聞を読むことで活字への抵抗感が減り、取材を通じて自信をつけた点など生徒の変化を説明。「記事の書き方は考えを正確に伝えるひな型になり、取材から投稿までの新聞の形式を通して他者との関わりを学べる」と新聞活用の有効性を強調した。


聖霊女子短大付属・中島教諭 読む力を培い、知識増やす

 授業を公開した聖霊女子短大付属高の中島康子教諭に新聞活用の狙いを聞いた。

(聞き手・読者センター 礒崎真澄)

 -論説文比較読みの国語的な効果は。

 「言葉に着目して読むことが国語的な効果を生む。二つの社説は主張が全く違うが、その違いは言葉によって生まれる。書き手が取捨選択する事実や表現により、同じ事象が全く異なる印象を読み手に与えることを言葉に注目し比べることで読む力が高まる」

 -現代文の授業に新聞を使う意味は。

 「論理の構成や展開を捉え、読解力を培い、知識を増やすこと。物事を知らないと文章は読めない。例えば『リンゴのようなほっぺ』と言ったとき、赤いリンゴを知らなければイメージできない。世の中の考え方や物事を身に付けることが国語力につながる。その点で新聞は『時事性を兼ね備えた百科事典』だ」

 「また、国語の教科書は普段使わない言葉も多く、苦手意識を持つ生徒もいるが、新聞は身近な出来事を身近な言葉で伝えている。その中で、日本語の繊細さに触れ、文章を読む面白さに気付いてほしい」

 -普段から新聞を使う授業を行っているのか。

 「授業で使うのは今年4回目。『こういう授業をまたやりますか』と生徒から聞かれ、好評だと感じている。週1回は授業の導入部分で記事を紹介し、5分で読ませ意見交換させている。地域の話題や世の中の動きなどジャンルは問わず、賛否が分かれる話題も提供するようにしている。自主的にスクラップしている子もおり新聞への関心は高い」