アラビア・フェリクス(幸福なアラビア)。アラビア半島のイエメンは古代、香辛料の交易などで栄えた王国が治めて、こう呼ばれた。しかし、かの地は今「最悪レベルの人道危機」(国連)が続く

▼政権派と武装勢力の内戦は1万人以上の死者を出し、飢餓やコレラのまん延を招いた。両軍をけしかけるのは隣接する大国、サウジアラビアとイラン。宗派対立、外国の思惑の犠牲は、常に市井の人々に向かう

▼今年も各地で、紛争による血と涙が流れた。欧米の移民排斥に象徴される、排外思想とポピュリズム(大衆迎合主義)は争いの火種となり、大量にまき散らされている

▼テロリストでも、過激派でもない、まき散らすのは国のリーダーたち。米国映画「華氏119」で、監督のマイケル・ムーア氏は訴える。独善的な専制支配は、国民の諦めからもたらされ、無関心は危険だ-と

▼国内では、米軍基地の移設をめぐる沖縄県と国の対立が、限界点に達している。問答無用とも思える政府の対応の陰に、「本土」に暮らす私たちの傍観はないだろうか

▼詩人の長田弘さんは作品「なくてはならないもの」に記す。「戦争を求めるものは、なによりも日々の穏やかさを恐れる。平和とは(平凡きわまりない)一日のことだ」。除夜の鐘が鳴る。1年の感謝とともに見も知らぬ誰かの幸せを祈る。