取材競争「焦タイム」

 野球少年はここにもいる。米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手を追って3度渡米し、この上ない興奮を味わった。普通なら地域の話題を取り上げるが、今年だけはご勘弁。

 右車線を走る車、英語だらけの日常会話。分からないことだらけなのに、全てが新発見でにやけ顔が止まらない。岩手出身の選手が大リーガーになることすら想像できていなかったが、取材初日の第1打席で本塁打。衝撃と大歓声で手が震え、シャッターが押せなくなった。

 取材が殺到するためシーズン中は異例の共同会見のみ。大谷選手の後ろを帰ろうとするだけで「抜け駆けなしですよ」と同業者に言われるほど窮屈な雰囲気。無安打なら会見もない。興奮は一転、パソコンの前で「迷走」状態になり、吐きそうな重圧がやってくる。

 「こんな取材ができることをうらやんだり嫉妬する人は大勢いる。誰もまねできない記事を書け」。先輩の激励が脳裏に浮かぶ。将来、伝説となる二刀流の1年目に立ち会える。こんなにつらく、刺激的で楽しい執筆作業はなかった。

 震災支援や本県出身選手の活躍で岩手と海外諸国の距離感は近づいた。子どもは世界を視野に夢を描き、仕事の可能性も広がる。記事が一助になればと願いながらも上達しない英会話に「焦タイム」。

(小田野純一)