【東京支社】国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致の意義について検討する日本学術会議は19日、文部科学省に回答書を提出した。ILCの学術的な意義を認めた上で、巨額経費の適正な国際経費分担について「見通しが明らかでない」などと懸念を指摘。「現状の計画内容や準備状況から判断して、誘致を支持するには至らない」との所見を示した。日本政府が意思表明を求められている国際期限は来年3月7日。計画実現の可否は政治判断に委ねられる。

 回答では、ILCで行うヒッグス粒子の研究について「今後の素粒子物理学が進む方向性に示唆を与える可能性がある」ことに「同じ認識を持った」と意義を認めた。当初31~50キロとした初期整備延長を20キロに短縮することについても「妥当な戦略」と評価した。

 一方で、短縮に伴い当初1兆1千億円とされた整備費が7千億~8千億円に削減される方向となったが「適正な国際経費分担の見通しが明らかでない」と指摘。運営に携わる研究者や技術者は「日本の現状では不足している」とし「新たな人材育成や海外からの参画で賄うのは不確定要素が大きい」と課題を挙げた。

 その上で「現状の計画内容や準備状況から判断して、日本に誘致することを支持するには至らない」との結論をまとめた。

 日本学術会議は同日、都内で幹事会を開き、検討委の家泰弘委員長(日本学術振興会理事)が最終回答案を説明。全会一致で承認した。続いて家氏は東京・霞が関の文部科学省を訪れ、磯谷桂介研究振興局長に回答書を提出した。家氏によると、磯谷局長は「回答を踏まえ、文科省として考えていく」と述べたという。

 終了後、家氏は報道陣に対し「新しい物理を探索する重要性に異論はないが、予算や人的資源の確保に明確な見通しがなく、現時点でゴーサインには至らなかった。これだけ大きな計画は素粒子物理だけでなく、より広い議論が必要だ」と語った。

 ILC計画を巡っては世界の主要な加速器研究所の所長らで構成する国際将来加速器委員会(ICFA)が昨年11月、初期整備延長の短縮計画を承認。これを踏まえ、日本学術会議は文科省の依頼で今年7月から国内誘致の意義について検討を重ねてきた。