本質見る取材 心がけ

 4月に入社し、事件・事故を取材する県警クラブに配属された。喜びを伝える報道とは一線を画す仕事の役割を考えながら、日々現場を駆け回っている。

 多くの事件を取材してきた中で記憶に残るのが、4月に北上市で発生した保護責任者遺棄致死事件。1歳9カ月の男児が親から十分な食事を与えられず、犠牲になった。同時期に東京都目黒区で似た事件が起きたこともあり、大きな社会的関心を集めた。

 現場取材で見えてきたのは、次第に子育てに疲弊していく父親の生活だった。付近住民は「親子仲良く遊んでいたこともあったけれど」と懐かしげに語ってくれた。胸が締め付けられる思いだった。

 この事件の報道には、大きな社会的意味があったように感じる。親の責任の重さと、命の危機にさらされた児童を救う社会の仕組みの必要性を世間に訴える役割が課されていた。十分に果たせたか内省したい。

 治安が比較的良いと言われる本県だが、事件や事故は毎日のように発生する。精神的にタフでなければ務まらないと感じる一方、慣れは許されない。どれひとつとして同じ事件はなく、当事者の人生や背景、抱える事情はそれぞれ違う。細部まで丹念に取材し本質に迫ることで、不幸な事件・事故の再発防止につなげたい。

(林 昂平)