東日本大震災の風化防止へ、3月11日を『大切な人を想(おも)う日』にする取り組みを世界に広げよう」。今年3月11日から3日間、被災3県を巡る研修旅行を行った大阪府東大阪市の近畿大付属高(中川京一校長、生徒2751人)英語特科3年生は、岩手日報社が呼び掛ける「大切な人を想う日」署名活動に共感。同日掲載の広告記事を基に英語の動画を作り発信している。

◆大槌で犠牲者追悼

 英語特科の約40人は研修旅行1日目、大槌町で追悼集会に参加。陸前高田市の一本松などを見学し住民と交流を深めた。

 動画は、研修旅行のまとめとして4月から総合学習で制作した。グループごとに原発事故問題や住民との交流などをテーマにクラスで発表。「大切な人」を取り上げた小田切颯人(はやと)さんのグループは「震災を風化させないため、世界に発信しよう」と動画共有サイトへの投稿を思い立った。

 各地で「地元で震災の被害や現状を伝えてほしい」との願いを託された小田切さんの胸に「東北の人々の悲しみや苦労、希望を世界に発信する責任がある」との使命感が芽生えた。

 岩手日報社からデータを取り寄せ制作を開始。遠い出来事だった震災を「忘れてはいけない」と感じるようになった。

◆動画サイトに投稿

 作品は約3分半。スライド21枚で「明日が来ることは当たり前ではない。震災を忘れないために3月11日を大切な人を想う日にしよう」と訴える。「全部見てもらえるように短時間に収めた」と話す片岡真優(まゆ)さんと西島史(ふひと)さんは「一瞬で記憶に残るように」「暗くならないように」と文字数や音楽選びを工夫。国内にも広げようと日本語版も作った。

 細川久美子教諭(45)は「伝わる英語を心掛けるように指導した。皆、力を合わせ頑張った」と目を細める。

 7月のNIE全国大会盛岡大会で発表し、10月初旬、動画共有サイトに投稿。同月下旬の文化祭では署名活動を行った。片岡さんは「原発事故問題も大切だが、風化防止を考えたとき『大切な人を想う日』の呼び掛けに、より広く訴えるメッセージ性を感じた」と説明。

 小田切さん、西島さんは「地震大国。明日、大事な人に会えなくなる、何げない日常がいつ壊れるか分からないとの教訓を国内外に広げたい」と力を込める。

 動画のアドレスは英語版https://youtu.be/f_l5aJH69vw 日本語版https://youtu.be/GBH18rq6O4g


 神野教諭 地域に根ざした情報に着目

 東日本大震災被災地研修を企画した近畿大付属高の神野(かみの)学教諭(33)に、研修や生徒の取り組みの意義について聞いた。

(聞き手読者センター・礒崎真澄)

 -被災地での研修旅行は、いつから、どんなきっかけで始まった。

 「今回が初めて。兵庫県西宮市で阪神大震災を経験した。2016年、岩手、宮城、福島県を訪れた際、阪神の5年目との違いに驚き、生徒に見せたいと思った」

 -研修の成果は。

 「多くの地元を愛する人に接し学んだことは大きい。『復興が進み、見学に訪れる人が減っている』と聞き『支援が必要なのはこれから』と感じたようだ」

 -新聞を活用して、生徒は動画を作った。

 「調べ学習でよく新聞を使う。地域に根ざした情報は地方紙に限る。生徒は『ネットと違い、新聞社の取り組みで信頼できる』と話していた。いい点に着目した。新聞の重要性をあらためて考えた」


【動画のナレーション全文】

A Day to Think about Our Loved Ones
   On  March  11,2011, the  Great  East  Japan  Earthquake happened. A project has been launched to help people remember that day. 
   We visited the Tohoku Region on our school trip. We saw what  had happened  that  day  and  what had been done for reconstruction. As a result, we thought about the potential risks we may encounter if the same awful disaster happens, as long as we live in Japan. Everyone we met there told us,“Please tell your family and friends about thecurrentsituationinTohoku." We realized that it is our mission to pass on accurate knowledge about natural disasters to our families and friends. 19,630 people died. 2,569 people are still missing. 121,781 houses were completely destroyed. The number of people living in shelters and temporary housing has declined, but 68,000 people are still forced to live in temporary housing. 
   In Iwate prefecture, 4,672 people died, 1,121people are still missing, and 466 died as a result of the aftermath of this earthquake. In total, there were 6,259 victims. Seven years have passed and the number of people who live in shelters and temporary housing has declined from 54,429 to 7,414. At the same time, seven years is long enough for some people to forget about this terrible disaster. In order for the memory of this earthquake not to fade away, Iwate Nippo, a local newspaper, is trying to make 3.11 a day to think about how precious time is with our loved ones. This project aims to have people remember the earthquake and remind them that not every person has a tomorrow.
   We hope to raise the number of signatures on the petition to make this special day happen to 12,000, hoping that a day to think  about  our  loved  ones  is approved by the prefectural assembly and the Diet.  We  want to raise awareness about the possibility  of  losing a chance forever to express our love and gratitude to our loved ones.

▼日本語訳
大切な人を思う日
 2011年、3月11日。あの日の記憶を風化させないようにと一つのプロジェクトがあります。

 私たちは、東北へ修学旅行で訪れました。あの日、あの時、何が起こったのか、そして今、復興は進んでいるのか、現状を見てきました。そして震災を身近に感じたのです。いつかは、私たちの身に起こってもおかしくはないのだと実感したのです。地震大国である日本に住む以上地震は決して人ごとではないのです。そうして東北で出会ったさまざまな人に、どうか今の東北を伝えてほしいと頼まれました。そして正しい知識を広めること、それが東北へ行き、いろんな話を聞かせていただいた私たちの使命だと気づいたのです。死者は19630人。行方不明者は2569人。全壊した家屋は121781棟。避難者は47万人から6万8千人まで減少しました。

 それでもなお仮設住宅暮らしを余儀なくされる人がいます。岩手県の被害を見ると、死者4672人。行方不明者1121人。震災関連死亡者466人。合計6259人もの人が犠牲となりました。避難者はピーク時の54429人から、7141人まで。それでも7年という月日は震災の恐ろしさを人々の記憶から風化させてしまいます。そこで岩手日報ではこの記憶を風化させないために、大切な人を思う日を企画しました。目的はもちろん、震災の記憶の風化を防ぐため、そして全ての人に当たり前の明日はないのだということを思い出してもらうためです。最終的な目標は県議会や国会で大切な人を思う日を制定すること。年に一度大切な人に、明日はもう言えないかもしれない自分の思いを告げる日です。

 そのために私たちは11月までに署名人数を12000人にすることを目標にしています。普段は恥ずかしくて言えなかったほんとうの気持ちが明日には永遠に言えなくなってしまうかもしれない、そんな思いをする人が少しでも減るようにそんな思いをしないように地震について正しく知ってもらうために、どうか私たちの取り組みに力を貸してください。