仮設商店の棚に工夫

手作りのポップ広告を商品棚に飾り付ける生徒=10月23日、福島県南相馬市・東町エンガワ商店

 福島県南相馬市小高区の小高産業技術高(鈴木稔校長、生徒527人)は、区内の仮設商業施設「東町エンガワ商店」(常世田(とこよだ)隆マネジャー)の協力を得て、商品の仕入れや販売方法を学ぶ特別実習に取り組んでいる。消費者のニーズを考えて商品を仕入れ、思わず手に取りたくなるような陳列で販売する。客の目を引くポップ広告も添え、商店の売り上げアップに貢献している。

 同校と同施設がある小高区は、東京電力福島第1原発事故に伴い、2011年に全域が避難区域になった。原発事故から5年4カ月後の16年7月に避難指示が帰還困難区域を除き解除され、10月末現在、同区の居住者は2977人で、原発事故前の約23%になっている。

 同校は、原発事故からの復興、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の推進などに寄与する人材を育てようと昨年4月、小高商高と小高工高が統合して開校した。昨年12月に商業科の授業「広告と販売促進」の一環で、古里の復興を進めるため、帰還住民らの生活を支える東町エンガワ商店で、特別実習を始めた。

 生徒は約3カ月間、商業科の菅野光教諭(31)から商品の棚割や陳列などを教わった。昨年12月には、1年生の授業で学んだマーケティングの知識を応用し、需要が見込まれる約10種類の菓子を仕入れた。商品が最も手に取りやすい高さ「ゴールデンライン」(床から85~125センチ)を意識し、何の商品をどこに置けば売れるかを仲間と相談しながら陳列した。明るい色合いやメッセージ性などを考えてポップ広告を作り、商品棚を彩った。10月には、人気商品のポップ広告を制作して付け加えた。

 常世田マネジャー(59)は「高齢者志向だった商品棚が一気に若返り、利用者が増えた」と効果を話す。

商品の特徴を考えながら、ポップ広告を作る生徒=11月2日、福島県南相馬市・小高産業技術高

 小高産業技術高の特色ある教育方針が評価され、文部科学省の職業人を育成する「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」に県内で初めて認定された。3年生の岩井里奈さんは「地域密着型で実践的な授業はやりがいがあり、私たちのやる気を高めてくれる」と笑顔を見せる。

 15年に開設した東町エンガワ商店は、原発事故後の住民の利便性確保に一定の役割を果たしたとして、12月に閉店する。新たに公設民営の商業施設「小高ストア」(岡田義則社長)が12月6日にオープンし、生徒はこの「新しい教室」で実習を続ける。3年生の草野流華(るか)さんは地元企業へ就職する。「消費者目線でものごとを考える力を応用し、多くの人を喜ばせたい」と目標を語る。

(福島民報社)

(終わり)


支える人たち

人を呼び込む施設に

和田智行さん

 南相馬市小高区の複合サービス業「小高ワーカーズベース」は市の委託を受け、2015年9月から「東町エンガワ商店」を運営している。和田智行社長(41)は「高校生が買いたい、食べたいと思うお菓子を自ら並べてもらおう」と小高産業技術高の特別実習に乗り出した。

 昨年6月から同校の生徒に企画立案や商品開発などのマーケティングを教えている。今年2月には、地域活性化に向けた仮想サービスの発表会に参加した。生徒が地域住民約100人を対象に行った市場調査の結果から考えたサービスの提案に耳を傾けた。生徒の多彩なアイデアを評価した上で、「この店にどうしても行きたい、と思わせる施設を造らなければ、人は呼び込めない」と指摘した。

 「反応が良く、何事にも前向きな子が多い」と印象を語る。地域の将来を担う生徒に向け、「地元のために活躍する人材に育ってほしい」と期待を寄せている。

共に小高盛り上げる

岡田義則さん

 同市原町区の青果仲卸業「丸上青果」は12月6日に開店する「小高ストア」の指定管理者を務める。岡田義則社長(44)は「地元の高校生と共に小高を盛り上げたい」と意気込む。

 施設は食料品や日用品などを扱うスーパーで、同校から徒歩10分ほどの大通り沿いにある。菓子売り場約3分の1のスペースの運営を生徒に任せ、商品の仕入れ、ポップ広告制作などに取り組んでもらう。実際の売り上げや利益も開示し、もうけるための販売方法を共に考えていく。生徒が企画した弁当や総菜の販売、小中学生向けワークショップの開催も検討している。

 商品の品ぞろえは、地域住民や高校生らから寄せられた意見や要望を基に決めた。「文房具を買うためだけに約8キロ離れた店に行く」との声もあった。

 今後は「東町エンガワ商店」に代わる「第二の教室」として、生徒の実践的な学びを支える。「柔軟な対応を心掛け、多くの方に愛される店をつくり上げる」と開店を見据える。