新しい農業の形模索

これまでに製作した照射装置を前に、新しい装置のアイデアを話し合う福島工高の生徒=10月27日、福島市

 福島市の福島工高(松本明倫校長、生徒829人)は、発光ダイオード(LED)照明を使った野菜栽培の研究に取り組んでいる。研究は今年で2年目。「どんな光が成長にとって有効なのか」と、昨年よりも最適な成長につながるよう知恵を絞り、研究でタッグを組む同市の福島明成高へ引き渡す準備を進めている。

 福島工高の生徒が、LED製造工場の福島サンケン(二本松市)の協力受けてLED照射装置を製作、福島明成高に引き渡し、同校生徒が装置を使用して野菜を栽培する。それぞれの専門分野を生かし、天候に左右されない野菜の安定栽培と販売を目指している。

 1年目の研究では、レタスやミニトマトなどを栽培。観察して分かったのは、光の強さのほかにも光の色(波長)が植物の成長に影響を与えるということ。

 レタスの苗を赤と青の2種類の光源で照らし、その生育状況を調べると、赤い光を当てた方が葉の面積が大きくなり、青い光を当てると茎が伸びた。人の目で感じる光と植物の成長に必要な光は異なるため、光量計で測る必要があると学んだことも研究の成果だ。

 10月26日、福島工高の教室では本年度、研究課題を引き継いだ電気科3年生の高橋亮さん、菅野雅稀さん、中村健太さん、佐藤龍幸さん、佐藤成悟さんの5人が製作作業の真っ最中。前回足りなかった光源を強くしようと、基板にLEDを一つ一つはんだ付けした。

 ビーズのような小さなLEDをはんだ付けする作業は精密機械を仕上げるような繊細さが求められる。「全部で720個を分担して付けます。作業しやすいピンセットも買いました」と11月中に引き渡すことを目標に、作業が急ピッチで進む。

基盤にLEDをはんだ付けする福島工高の生徒。細かい作業の連続となる

 プログラムを担当した菅野さんはLEDの波長をあらかじめ数パターン設定し、ボタンで切り替えられるようにした。「赤を強くする必要があるときに簡単に切り替えられるようになった」とアイデアを出し合い、使い手の操作性も考えた。

 LEDを使った野菜栽培や土を使わない水耕栽培は、新しい農業の形として注目される。半導体製造工場の一部で低カリウムレタスを栽培する企業、季節を問わず効率的なメロン栽培に取り組む企業など県内でも広がりを見せている。

 班長の高橋さんは「太陽光など再生可能エネルギーを使う方法も考えた」と研究のさらなる構想を披露。「菜種油などほかにも用途が広がる菜の花やジャガイモなども栽培できたら」との意見も出た。未来を設計する生徒たちの探求心は尽きない。

(福島民友新聞社)


支える人たち

物づくりの意識成長

鈴木将仁さん

 福島工高電気科は発電・送電に関する高電圧の知識から、エレクトロニクス分野まで幅広く学んでいる。

 研究に取り組む生徒は多くが、在学中に工場やビルなどの高圧電流が流れる建物の工事に必要な国家資格「第1種電気工事士」「第3種電気主任技術者」「工事担任者」など電気技術者として高い知識と技術が必要な資格を取得する。

 昨年の担当教諭から研究を引き継いだ福島工高の鈴木将仁(まさひと)教諭(26)は「自分たちが作りたいものをどうやったら作れるか考えながら学んでいってほしい」と研究に熱中する生徒たちを温かく見守る。

 担当教員として生徒たちの成長が見られたのは、使う人の立場に立って物づくりをしようという意識。コンセントを差すと勝手に電源が入る仕組みだったものをスイッチ式に変えたり、温度計や湿度計を付けるところなど「こうした方がいいじゃないかと意見を出して相手が使いやすいように考えている」とうなずく。LEDは今後も用途が広がっていく技術であり、生徒の更なる活躍の場を期待する。

企業が求める人材を

半沢幸祐さん

 また同校は「実社会で通用する人材の育成」を教育方針に掲げ、安全意識の高い技術者の育成にも力を入れる。担当する半沢幸祐(ゆきひろ)教諭(36)は「目に見えない電気の怖さをしっかり学び、対策を身に付けるのは企業が求める人材にもつながる」と話す。

 3年前から企業と連携し、労災事故防止に重点を置いた授業を取り入れている。授業では企業から外部講師を招き、実際に作業現場で行われている危険予知訓練(KYT)を行う。労働災害の現状を学びながら対策までを話し合うことで、技術者に求められる使命と責任を考えさせている。

 授業を受けた生徒たちは「少しの間違いが大きな事故につながることを学べた」と話しており、企業側も生徒の気付きが新たな未然防止策につながっているという。