奇跡の一本松などで作られたバイオリンの優しい調べに耳を傾ける住民たち。今月、陸前高田市の災害公営住宅県営栃ケ沢アパートの集会ホールで、脳性まひを患いながら演奏活動を続ける22歳、式町水晶(しきまち・みずき)さん(神奈川県)のコンサートが開かれた。

 聴衆は大半が高齢の女性。軽やかなバイオリンに合わせ「上を向いて歩こう」を口ずさみ、笑顔で記念写真に収まる。ホール内には入居者手作りの人形などが展示され、コミュニティーづくりに積極的な様子がうかがえる。

 高齢者の元気な姿が目立つのは、この団地に限らない。だが、問題は10年、20年後。災害公営住宅の高齢化率は高く、6割に上る団地もある。

 沿岸部の災害公営住宅は、9月末時点で建設予定戸数5552戸のうち9割以上が完成。ハード面では最終盤に差しかかっているが、既に空き室が出始めている。高齢入居者が亡くなったり、施設入所や家族と同居するため退去するケースもある。

 今後も空き室の増加が見込まれる中、陸前高田市や釜石市などで、被災者以外の一般住民に入居対象を拡大する動きが広がってきた。多様な世代が入居することは、団地内のコミュニティーの活性化にもつながるだろう。

 ただ、せっかく若い世代が入居しても、自治会の役割が一挙に押し寄せたり、隣近所の要支援者との関わりに困るようでは、入居のメリットは感じられまい。

 若い世代だから大丈夫、ではなく、多様な世代を支援する仕組みが必要だ。民生委員、社会福祉協議会、保健師らが連携して見守っていることが入居者にきちんと伝わることで、若い世代も安心して入居できるのではないか。

 孤立が高齢者の健康に及ぼす影響について、筑波大の研究が注目される。6年間にわたり滋賀県米原市の高齢者を追跡調査した結果、孤立した高齢者は、そうではない高齢者に比べ、介護が必要な状態になったり、死亡するリスクが1・7倍に上った。

 関係機関の支援だけでは、孤立解消は難しい。入居者が頑張りすぎず、自ら支援を求めることも大切だ。

 笑顔を絶やさず演奏する式町さん。合間には、リハビリの過酷さや、体の状態次第ではいつまで演奏を続けられるか分からないことなど、自らを率直に開示。若い力で住民に元気を与え、自らも「皆さんに元気をもらった」と感謝を述べた。

 共感に満ちたこの場は、災害公営住宅の未来を考える上でも示唆的だ。多世代が共生し、病気や障害を抱えた入居者が隠さずに助けを求め、支え合う。そんなイメージに向かって歩みを進めたい。