たそがれ時、広がる群青に溶けゆくほんにょ=奥州市前沢生母
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実りの陰影に迫る冬

 晩秋の県内は朝晩の冷え込みが厳しくなり、初霜の便りも聞こえてきた。農作業は最後の繁忙期を迎え、日没の空にせっせと働く人々が浮かぶ。

 「ガタガタガタッ」。奥州市前沢生母(せいぼ)の田んぼに、脱穀機の音が響く。農業鈴木勉さん(76)と妻ノリ子さん(71)が「シャンシャンッ」と穂を鳴らし、「ほんにょ」から稲束を外す。

 「この景色の中で作業できるのが一番」とノリ子さん。田んぼは市内を一望し、遠くに焼石連峰が広がる。勉さんは「少しでも多く収穫できればうれしいし、『おいしい』って言われたらその気になるよ」と笑う。

 たそがれ時、オレンジから群青に変わる空。秋の夕暮れは、どこか寂しい。ひんやりとした風の音は、迫る冬の足音にも聞こえる。四季折々に姿を変える広大な岩手。季節は巡る。

 (文・写真 報道部・山本毅)

メモ ほんにょは、刈り取った稲穂を乾燥させるため、1本のくいに束で重ねたもの。奥州市前沢生母地区では「ほんにょ」と言い、地域によって「ほにお」「ほにょ」などと呼ばれている。近年はコンバインによる刈り取りが主流となり、ほんにょの姿は年々減少している。