手間が掛かる障害者を、どうしたら雇わずに済ますことができるか。中央省庁の障害者雇用水増し問題で、元検事らの検証委員会が公表した調査報告書からは、官僚が編み出し受け継いできた手口の悪らつさが浮かび上がる。

 退職者や死者も算入する。近視の人は身体障害者にしてしまう。こうした手法で、昨年6月時点で国の28行政機関が計3700人を「障害者」として計上し、障害者雇用促進法が定める雇用率の達成を装っていた。

 裏切られた障害者。検証委の報告書は、真相究明を求める願いをも裏切った。各省庁の「恣意(しい)的解釈」に基づく「ずさんな事務処理」を指摘したが、歴代の人事担当者のヒアリングなどは行わないままに、意図的ではないと結論付けた。その背景には、臨時国会前に幕引きを図るという政府与党の思惑がにじむ。

 いつ誰が水増しを始めたのかも分からないのに、幕引きできるわけがない。国会も検証に力を尽くすべきだ。

 再発防止策もしかり。政府は、厚生労働省による他省庁への調査権限を強化するため、早ければ来年の通常国会に障害者雇用促進法の改正案を提出する方針だ。

 だが、その厚労省も15人を不正算入。しょせん身内のチェックでは再発を防げまい。障害当事者団体や専門家を交えた独立機関の設置など、実効性ある再発防止策を国会で議論すべきだ。

 政府は雇用確保策として、27機関で2019年末までに4千人超の障害者を採用する計画を掲げたが、雇用率達成ありきの無謀な計画としか思えない。障害特性への理解も、労務管理のノウハウもない職場で、一気に数多くの障害者を雇えるわけがない。

 障害者雇用をめぐっては、今春に法定雇用率が引き上げられたほか、全国的な人手不足も背景に、積極的な企業が増えている。そんな中、中央省庁に続き、地方自治体でも計約3800人の不適切な算入が判明しただけに、今後、採用競争の激化は必至だ。

 各省庁が、手間が掛からない軽度の障害者を採用しようとして民間と競合する一方、重度障害者は置き去りにされることが懸念される。

 数合わせの大量採用では、退職者も続出しかねない。現状でも職場定着は大きな課題。本人や企業の人事担当がどれほど努力しても、職場内の人間関係の難しさなどから辞めるケースは少なくない。

 中央省庁が水増しに腐心し続ける間、民間は雇用・職場定着に向けたノウハウを積み重ねてきた。民間を範として、まずは障害者が働きやすい職場づくりを進め、身の丈に合った計画で受け入れていくべきだ。