会見を映すテレビから、無念さが伝わってきた。職員による巨額横領疑惑が明らかになった大船渡市農協の菊池司組合長。目を赤くして謝罪する姿に、問題を自分事と受け止める思いが感じられた

▼農協の「カネ」に絡んだ不祥事に、もはや意外感はない。横領などの1件当たりの金額は数十万円から、時に億単位に及ぶ。「チェック体制の甘さ」とは片付けられない、組織に染みついた体質と言えば、きつ過ぎか

▼県内の農協は七つ。県農協中央会によると、不祥事の公表は組合運営や対外的な影響を踏まえ、各農協が独自に判断するという。農協は多くの組合員からなる公的な組織。不正の大小を問わず、情報公開の徹底は当然と言えよう

▼世に、「業界団体」は多い。人手が限られる中、特定の職員が、同じ仕事を長く担当しているケースは珍しくない。不正の素地は至る所にあり、内部監査の充実や、隠ぺいを許さない行政の指導が強く求められる

▼官庁や大企業を舞台にした、社会を揺るがす不祥事も収まらない。職員が自殺するほどの不正が起きても地位に居座る大臣や、入試の得点を操作しても人ごとのような医大のトップには、あきれる

▼「『それは私の責任です』ということが言い切れてこそ、責任者たりうる」(松下幸之助)。組合長の涙を、信頼回復に向けた決意と信じたい。