宮古市出身のシンガー・ソングライター村松徳一は、新譜「星めぐりの歌」を発売した。「星」をテーマに、カバーとオリジナルの計4曲を収録。L⇔Rでの活躍が知られる黒沢秀樹をプロデューサーに迎え、村松の真骨頂である歌声と、アコースティックギターの魅力が際立つ意欲作だ。村松は今作を通して「歌に対しての心(しん)が明確になった」と確かな手応えをつかみ、大船渡市を皮切りに26日から始まるリリースツアーに臨む。制作過程で感じた変化や、新作に込めた思いを聞いた。

「星めぐりの歌」必然の巡り合い

 ―カバー曲に「星めぐりの歌」を選んだのはどうしてですか。

 今回のディレクターやプロデューサーからの提案でした。弾き語りで音楽活動を始めた頃に一度、トライしてみたけれど全然歌えなかった。このタイミングで、再び歌う機会に巡り合って不思議な感覚、というよりは「必然」なんだと思いました。

 もともと「星」を歌詞に入れたオリジナル曲もあるんですが、「星めぐり」っていうキーワードが、子どもの頃と重なるところが多いんです。例えば、宮古で前に開かれていた「星めぐりホタルコンサート」に、アマチュアのバンドマンだった父親が出演していて、よく連れて行ってもらった。沿岸なので学校で「星めぐりの歌」は習わなかったけれど、じいちゃんとばあちゃんが宮沢賢治好きで、いろんな話をいっぱい聞かされて育った。だから、子ども時代の思い出や見た景色が「星めぐり」という言葉に詰まっています。

 レコーディング前に、いろいろな「星めぐりの歌」を聞きあさって、自分ならどう表現したいかを考えたんです。自分は、聞く人が落ち着きたいときや悲しいとき、うれしいときに、すっと「聞きたいな」と思える音楽を作りたい。この曲も日常にすっと入れる素朴さを大切にしました。「この曲だけは歌いたい」と思っていたので、リリースできてほっとしています。

 ―もう一つのカバー曲は、北野武さん作詞、玉置浩二さん作曲の「嘲笑」。

 レコーディング前はプレッシャーと不安でいっぱいでした。曲に対しての理解や歌唱の技術的なところも含めて迷いがあったけれど、直前で切り替えられた。うまくかみ砕いて「村松徳一という世界で表現しよう」と決めました。

 ―「冬空のシリウス」はライブでも人気の曲。今年のいしがきミュージックフェスティバル(9月24日)のCMソングとしても放送されていましたね。

 日常で自然に聞こえてくるテレビの音の中で、「耳にとまった」とか「耳が引かれる曲だった」と言ってもらえることが多くて、うれしかったです。普段CDで音楽を聞かない人や、ライブに来たくてもこられなかった人にも届いたと思う。CMに使ってもらえてありがたかったです。

 ―L⇔Rの黒沢秀樹さんをプロデューサーに迎えている。

 最初に聞かされたときはびっくりしました。家にCDがある方と一緒に仕事をするなんて。緊張が大きかったですけれど、ワクワク感もありました。今回のディレクターやプロデューサーのみなさんと一緒にできてよかった。

 秀樹さんからはよく、ディテール(細部)を意識するようにと言われました。「細かいところにもこだわって、向き合っていくのが大事だ」と。今まで感覚でやってきたので、自分に足りないところはそこだと痛感した。曲の作り方や曲に対する姿勢も、いままで知らなかった新しい世界を経験しました。その過程が苦しくなかった訳ではないけれど、苦しさよりは新しい発見や出会いから得るものの方が大きかったです。得たものは確実に音源の中に詰まっているし、ライブにも出せると思っています。

 ―今作を通して「得たもの」とは。

 これまで自分の中で曖昧だった、歌に対しての心(しん)がはっきりした。これからは、もっといろいろな人に、歌で情景や感情を伝えて、共有できるシンガーになりたい。シンガー・ソングライターにこだわらず「シンガー」になりたいという、はっきりした目標が見えました。

 ―26日からはリリースツアーが始まります。いまライブで感じている変化は。

 ライブのスタイルを変えて、今まで使っていた(多重演奏のために用いる)ループ・ステーションなどの機材を一切なくしました。この声だけで伝えたいと思った部分が大きかったからです。今までの楽曲には英語を交ぜたものもありますが、今作は日本語だけなので、ライブでお客さんとの心の距離が近くなれると期待しています。


村松徳一「星めぐりの歌」リリースツアー

10月26日 ケセンロックフリークス(大船渡市)
10月27日 クラブチェンジWAVE(盛岡市)
10月28日 クラブカウンターアクション宮古(宮古市)
県内3カ所、関東などでも開催する。

詳細は、村松徳一オフィシャルサイト(http://muramatsutokuichi.com/)へ。

むらまつ・とくいち シンガー・ソングライター。2014年、アマチュアコンテスト「いしがきミュージックブルーム」でグランプリに選ばれ、同年12月にCD発売。ロック、ポップス、カントリーなど、さまざまなジャンルの音楽から影響を受けて育った感性から生み出される楽曲と、その歌声が評価されている。いしがきミュージックフェスティバルや、ARABAKI ROCK FESTIVAL(宮城県川崎町)など大型音楽フェスへも出演。26歳。