自民党は、憲法改正条文案に関する公明党との事前協議を断念。24日召集が見込まれる臨時国会に、9条への自衛隊明記など今春とりまとめた4項目の党改憲条文案の単独提示を目指すという。

 公明党が協議に応じないのは、統一地方選や参院選を来年に控え、改憲に慎重論が根強い支持層に波風を立てたくないのが本音とされる。だが「憲法は与党協議にそぐわない」とする建前は、それ自体が道理と言えるだろう。

 法案や予算案ならいざ知らず、憲法に与野党対決の構図はなじむまい。国会の憲法論議が協調を重視してきたゆえんだが、自民単独提示の動きは、その流れを一変させる可能性をしのばせる。

 改憲を宿願とする安倍晋三首相(自民党総裁)は、改憲に関わる党の重要ポストから野党協調派を外し、改憲推進派の起用を進めている。

 先ごろ、衆院憲法審査会の与党筆頭幹事に、野党との協調を重んじてきた中谷元・元防衛相に代えて新藤義孝元総務相を充てる人事を内定したのは象徴的だ。与党筆頭幹事は、審議日程やテーマを巡って野党側との交渉を取り仕切る要の役どころ。新藤氏の憲法観は、安倍首相に近いとされる。

 同じく協調派とされる与党幹事船田元氏も交代の方向。改憲論議を自民主導、さらに言えば首相の意向に沿って進める態勢が整いつつある。

 党総裁選で3選された首相が、任期の仕上げとして改憲実現に躍起なのは衆目の一致するところだ。対抗馬として善戦した石破茂元幹事長も、憲法観や手続き論で違いこそあれ議論には前向き。党内で改憲機運が盛り上がっているのは確かだろう。問題は国民の多くが、それを冷めた目で見ている現状だ。

 世論調査では次期国会への改憲案提出に「反対」が多数を占める。社会保障制度の充実や経済政策などに関心が集中する中で、改憲への期待は高くない。

 安倍首相は、自ら提唱した9条への自衛隊明記案について、昨年2月の衆院予算委員会で「自衛隊が合憲であることは、明確な一貫した政府の立場だ。それは国民投票で否決されても変わらない」と述べた。何のための改憲か国民が戸惑うような発言には、改憲それ自体が目的化している印象が否めない。

 直近の共同通信調査によると、先の内閣改造と自民党役員人事を「評価しない」が多数派で、内閣支持率も下落。要因はさまざまに推察されようが、総じて信頼には至っていないということだ。

 森友・加計学園問題も依然くすぶる中、「数」で主張を押し通すような改憲論議を、国民は決して望むまい。