今年の新聞週間が15日始まった。子どもから高齢者まで、その手にスマートフォンが握られ、指1本で世界とつながる便利さと怖さが共存する時代だ。情報の渦を生きていく子どもたちにとって主体的に選択、活用する力を育むことは必須。メディアの一つ、新聞の特性に価値を見いだしたNIEの取り組みが県内の教育現場に広がっている。

 「Newspaper in Education(教育に新聞を)」の略称であるNIEは1930年代に米国で始まり、国内では85年の新聞大会で提唱された。情報の信頼性や事実に対する多角的な視点が、子どもたちの読解力を高め、クリティカル・シンキング(批判的思考)を鍛えるなどとして活用が進む。

 主体的・対話的で深い学びをポイントとする新学習指導要領は、総則に新聞活用を明記した。新聞はアクティブ・ラーニングにうってつけの「生きた学習材」といわれ、学校の学びと現実社会を結ぶ窓口になる。

 今夏には第23回NIE全国大会が盛岡市を主会場に開かれ、北海道から沖縄まで各地の教育・新聞関係者1612人が参加。このうち6割近い931人が県内の教員らで占めた意義は大きい。

 大会では、親和性の高い社会や国語をはじめ、道徳や総合的な学習、教科横断など多彩な実践を紹介。東日本大震災の発生以降、復興・防災教育に新聞が果たしてきた役割は、被災地である大槌学園(大槌町)や盛岡での公開授業などを通して発信し、自然災害が相次ぐ各地の関係者に示唆を与えた。

 新聞の読み方を知り、スクラップやワークシート、ミニスピーチ、意見文投稿などさまざまな活動を通じ、児童生徒は発達段階に応じた付き合い方を身に付けている。「スマホがあれば困らない」と言っていた子が、記事に込められた思いを見つけ、無心に読む姿は忘れられない。

 日常から触れ、親しむ環境づくりが大切になる。閲覧コーナーに置くだけでは心もとない。教員が職員室で新聞を広げる暇がない状況も寂しい。朝や帰りの会で話題にしたり、朝学習の時間を週1回NIEタイムにするなど、教員も子どもも過度な負担なく機会を持つことから始めてみてはどうだろうか。

 実践する教員からは「『この記事を読ませたい』『授業で使えそう』と考えながら読むのでアンテナが高まり、視野が広がった」と、自身の変化を実感する声も聞こえる。

 新聞週間の代表標語は「真実と 人に寄り添う 記事がある」。読者の思いに応える、岩手らしいNIEを次世代のために育てていきたい。