熊本県の県紙・熊本日日新聞社が出版した「手記 私と熊本地震」が届いた。より多くの被災者の声を集めようと、地震発生1年後の2017年4月から紙面掲載。本では71編の証言を収録している

▼最大震度7の揺れに2度も襲われた恐怖、かけがえのない人を亡くした喪失、全国から寄せられた支援への感謝。東日本大震災の記憶とも重なり、胸が締め付けられるような思いで読んだ

▼被害が大きかった益城(ましき)町の松岡マチ子さんは「地震の神様、どうか弱い者いじめはこれっきりにして」と切実な思いをつづり、熊本市の山本徳雄さんは若者ボランティアに感動しつつ「高齢者は『光齢者』として世を照らす」と人生観を変えた

▼手記には共通するキーワードがある。「絆」「連帯」。平時は何気なく聞き流してしまいがちだが、災害時にはとてつもなく存在感を増す。その字源に諸説はあるが、「人」は支え合いながら生きているものだと改めて思う

▼時間の経過とともに記憶の風化は避けられないにしろ、語り継ぎ、記録を残すことは未来への責務。まして、全国各地で「被災地」が続出する近年にあってはなおさらだ

▼熊本市の河端七美さんは「明日はきっと」という詩を作った。「いまはつらい だけど前を向こう 明日はきっと えがおがいっぱいだから」。あの頃の笑顔を忘れまい。