地元紙の記事4本を印刷したプリントとワークシートを配り、担当の斉藤忠教諭(43)が「『なるほど』とか『心が動かされた』と思った部分に印を付けて」と呼び掛けた。

 青森市の古川中(山田由子校長、生徒330人)3年1組の社会科。「憲法」の振り返りの授業だ。

 

クラスメートと新聞記事を使い憲法について考える青森・古川中3年1組の生徒

記事はマイクロプラスチックの海洋汚染、人気漫画の著作権法違反事件、女性の働く機会に関するアンケート分析、知的障害者が人権侵害を受けたとし損害賠償を求めた訴訟-の4本。生徒は赤ペンや蛍光ペンを片手に記事を読み進めた。

 読んだ後はワークシートに向かう。タイトルは「記事から読み取る○○権」。3項目で、はじめは「この記事から読み取れるのは(○○)権についてです」の問い。次に簡単な感想を書き、最後に星印を塗り記事の深刻度を示す。

 ワークシートの記入が終わったころを見計らい、斉藤教諭がアトランダムに4人を指名。四つの記事について答えさせ、解答を導き、星の数などを聞いた。

 その後、5、6人一組の班に分かれ討論。「一番深刻な記事」を選び、解決策を考え、代表が発表した。

 マイクロプラスチックを選んだ班は「世界的に汚染が広がっている」と理由を説明し「プラスチックの使い捨て商品を徹底的に減らす」と解決策を提案。女性の働く機会調査を取り上げた班は「男女平等はほど遠い。男女を同数で雇用する制度が必要」と考えた。知的障害者の訴訟を挙げた班は「人権を尊重するべき。国民全体で憲法への理解を深めるべきだ」と発表した。

 菊池一温(かずはる)さんは、新聞を使う授業について「身近なところで、いろいろな問題が起きていることが新聞を読むことで分かり、考えさせられた」と振り返り、畠山蒼舞(あおい)さんは「親に勉強のためにも読むように勧められている。社会が分かり、さまざまな出来事に興味がわく。一人一人が考えることで社会問題が解決に向かうと思う」と実感していた。

 仕掛け工夫、自分事に

朝読書の時間に新聞を読む木村笙さん

 青森市中心部に位置する古川中は1947年開校。NIE実践指定校で社会科で新聞を活用する一方、毎朝、記事を使ったスピーチを行い、朝読書の時間には新聞を読む生徒の姿も見られる。

 3年1組の木村笙(しょう)さんもその一人。「中国『脱ガソリン車』加速」の記事を「地球温暖化防止につながる」との期待からクラスで紹介した。朝読書でも新聞を広げ「憲法9条の改正問題や地球温暖化など、いろんなことが載っていて面白い」と話しこの日は「大谷初勝利」の記事に目を落とした。

 斉藤教諭の授業を参観した日本新聞協会認定NIEアドバイザーの大賀重樹さん(52)=同市・東陽小教頭=は「斉藤教諭の授業には、さまざま仕掛けがある」と説明する。

斉藤忠教諭作成のワークシート

 書くスペースの少ないワークシートは「これならできる」と生徒をリラックスさせ、星を塗るなど遊び心も盛り込んでいる。授業のテンポもよく、グループワークでは「誰か一人が書けば発表できるよ」と声をかけ、問題の解決策を皆で考え「自分事」に落とし込んでいる-と大賀さんは解説。

 「当初『男女平等』が大切-と熱心に話していた班が発表では『環境問題』に。自分の考えと友人の考えを主体的な対話の中で比べ、考えが深まりグループ内の共有に達した」と評価する。


 斉藤忠教諭に聞く 視野を広げる現在進行形

 2011年のNIE全国大会青森大会で公開授業を行った斉藤忠教諭に、今回の授業の狙いや教室で新聞を活用する意義を聞いた。

(聞き手・読者センター礒崎真澄)

 -四つの記事を使った今回の授業の狙いは。

 「憲法の授業の振り返り、まとめの形だが、考えを深める発展型。教科書に書かれた『~権』が、実社会の中で問題となっていること、憲法では守られているはずの権利が実は守られているものではないことを伝えたかった。一つのジャンルに偏ることなく、いろいろな方面から憲法を考え、視野を広げることが目的。時間的に五つはちょっと多いと考え四つにした」

 -新聞を授業に活用する意義は。

 「社会科で求められるのは、主体的に考え、お互いに意見を持ち、友人同士でぶつけ合い、確かめ、互いの力を借り、解決策を考えること。新聞を使うことで、自分たちが生きている時間の現在進行形の事案で考えることができる」

 「教科書にも新聞記事は載っているが、普遍的で分かりやすいものだ。生徒に一つの記事だけが全てと感じてほしくない。また『きょうは、こういうことをやる』というより、見出しや写真を見せるだけで生徒を引きつける力がある」

 -主権者教育にもつながる。

 「主権者教育は政治だけではない。たくさんの事象について『自分だったらどうする』と考え『自分事』にすること。その点で地元紙は身近な話題が多く役に立つ」

 -新聞を活用した授業の準備は。

 「朝、新聞を読んだ時、気になった記事に印を付け帰宅後、ファイリングしている。カテゴリー別に分けておくと、使いたいときにすぐ引き出せ便利だ。『ぜひ使ってみたい』と思う記事もあり、そういう記事には、背中を押される思いがする。NIE青森大会で取り上げた東日本大震災の記事もその一つ。新聞記事には、そのような力があると感じている」