新聞を活用し、ビジネス基礎を学ぶ盛岡商高の生徒

盛岡商高(田中耕之助校長、生徒733人)は、国語などだけでなく、ビジネス基礎など経済系の専門科目で授業に新聞を活用している。会計ビジネス科1年C組(41人)は、コンビニエンスストアを扱った記事から業界の戦略や課題をとらえ、解決に向けた意見を考えた。新聞を通し、自分たちの暮らしの延長線上に社会の動きがあることを実感し、学びを深めた。

 6、7人ずつに分かれて班学習を進めた。コンビニの取り組みを示した複数紙の中から、グループごとに事前に記事を選定。▽大手コンビニA社は既存店の売上高が60カ月連続増収▽カフェインを取り除いた「デカフェ」飲料商品が増加▽秋冬向け食品の刷新▽人手不足-など、それぞれ関心のある記事がワークシートの左面に貼られた。

タブレット端末を使い、調べ学習をする生徒

 担当する椛沢和歌(かばさわわか)教諭(43)は「業界がどのような新しい取り組みをしているのかを新聞記事から読み取りたい。課題についてグループで考え、発表してもらう」と手順を説明した。

 生徒は記事のポイントに蛍光色ペンで印を付けながら要約に取り組んだ。タブレット端末が各班に1台ずつ用意され、分からない用語を調べながらワークシート右面に考えをまとめた。

 

コンビニエンスストアの記事を基に作成したワークシート

企業のオフィス向けに自動販売機やセルフレジ方式で商品を提供する無人の「ミニコンビニ」事業を強化している事例(8月16日付、岩手日報)を取り上げた班は「今後は学校などにも設置が進み、決済方法も多様になっていくのではないか」と思いをめぐらした。

 なかにはコンビニ店舗へ出向いて責任者から聞き取りした班もあり「業界が成長するためには、人手不足や客数減少への対応は必要だ」と述べた。妊婦や健康志向の高い女性を中心に注目されているデカフェ飲料を調査した班は実物を持参し「飲んでみて後味が違うと感じたが、(ニーズもあり)商品数は増えていくだろう」と予測した。

 生徒にとって身近な存在のコンビニに関する授業は、新聞記事を通してさらに関心を高めた様子でグループワークも活発に行われた。佐々木優さんは「新聞を読むと社会の大きな事象から街の小さな話題まで分かる。社会人になってからではなく、今のうちから読みたい」と笑顔を見せた。

 盛岡市で開かれた本年度の東北6県商業教育研究大会(8月31日、9月1日)の研究授業の一つとして盛岡商高で公開した。授業後の協議会で、福島県教育庁高校教育課の羽染恒指導主事は新聞活用について「国語や社会だけでなく、商業の授業でぜひ生かしてもらいたい。教師の仕掛け次第で展開が膨らむ」と呼び掛けた。

 椛沢教諭は「今の生徒たちは新聞を読み慣れていない。社会に出て困らないように、世の中のことをきちんと知っておく必要がある。積極的に取り組んでいきたい」と意欲を語る。

 コラム書き写しや閲覧コーナー 全校で親しむ環境に

コミュニティーホールで新聞を読む生徒

 盛岡商高は、朝学習の時間に2、3年生が新聞コラムの書き写しに励んでいる。ニュースに触れながら、語彙(ごい)力や筆記力を高める狙い。新聞閲覧コーナーを昇降口近くに移すなど、生徒が日常的に新聞に親しむ環境を整えている。

 NIEを実践する国語科の菊池久恵教諭(53)はまわし読み新聞や、小論文指導の過程でテーマを設けたコラムを執筆する活動などに取り組む。昨年度はオピニオン欄に投稿した約60人の生徒全員分が掲載。「励みになるし、お互いの考えを理解することにもつながる」と効果を実感する。

 担当する新聞編集委員会の活動とも連携し、NIE関連コンクール入賞を学校新聞で紹介。NIE実践指定校として配布される新聞各紙は、より多くの生徒が閲覧できるようにと昇降口隣のコミュニティーホールにコーナーを設け、下校時などに新聞をめくる光景が見られる。

 菊池教諭は「NIEと言わなくても、新聞を教材に活用している先生方は多い。各教科で意識的に扱っていけるような取り組みが大事になってくると思う。生徒が新聞に触れる環境を整えてきており、自ら読んで発信する力を高めていきたい」と見据える。


  盛岡商高・椛沢和歌教諭  役立つ正確性や詳報性

 NIE活動を実践する椛沢和歌教諭に、新聞活用の意義を聞いた。

 ネット全盛の時代にあって、正確性や詳報性を特長とする新聞から得られる情報は有益だ。商業教育は社会や企業に求められる人材の育成を目指している。日々変化する経済社会の中で、何が起きているのか世の中の知識がないのでは実社会に出たときに困る。

 そのような思いもあり、約15年前から新聞を教材に取り入れている。まずは写真からでもいい。新聞に触れ、親しむきっかけをつくりたい。

 授業では毎時間の冒頭、生徒に気になるニュースを発表させており、場合によっては生徒同士で対話を広げることもある。1年生のときから取り組んでいる流通ビジネス科3年のクラスは、さまざまな話題について深い討論ができるようになってきた。

 「課題を見つけ、自分の考えを持ち、意見を言う」。そのような流れを意識した授業を行っていきたい。

 (談)