小中一貫の義務教育学校、大槌町の大槌学園(松橋文明学園長、児童生徒627人)。5年1組(36人)の窓から、新聞記事を読み比べ、発表する子どもたちの元気な声が響いた。

 県内で真夏日(最高気温30度以上)が続いていた7月12日の国語の授業。担任の多田俊輔教諭(31)は、真夏日を伝える同月1日付と猛暑日(同35度以上)を報じる11日付の岩手日報1面を黒板に張り付けた。

 爽やかな夏空の写真の真夏日とかげろうの写真が載った猛暑日の紙面。課題は「新聞記者やカメラマンが、どのような意図で記事を作っているか考えよう」だ。

 初めに前回まで3回の授業で習った内容を復習。記事を読む手がかりを問われた児童は「見出し」、「写真」、「リード」と大きな声で答え、黒板に張った紙面の下に集まった。

 「今日は、最近の暑さについての記事を読んでみましょう。見出しや写真に注目してください」と多田教諭。子どもたちは二つの記事のプリントに目を凝らし気付いた点を付箋に書き込み、一人一人発言した。

 7月1日の記事については「太陽がまちを照らし、爽やか」「気持ちの良い暑さを感じる」、11日の記事には「もやもやした暑さが伝わる」「熱中症に気を付けようと思う」「見出しの『うだる』はすごく暑い感じ」などと説明。

 グループに分かれ、記者やカメラマンが記事に込めた意図を話し合いホワイトボードに書き込んだ。

 グループの代表は「記者やカメラマンは、熱中症の危険性を伝えようとしている」「暑さ対策を呼び掛けている」「『熱中症に気を付けて』との思いを込めている」「気を付けてほしいことや大切な対策を詳しく分かりやすく読者に伝えている」などと、それぞれ発表した。

 三浦和葉(かずは)君と岡本亜胡(あこ)さんは「両方の記事に熱中症の事が書かれているが、病院に運ばれた人数が違う。暑さが厳しくなり、熱中症対策を呼び掛けている」と行間から編集者の意図を読み解き「たくさんの人に伝わるように分かりやすく書いてあった」と実感。

 授業で取り上げられる新聞について、熊谷百笑(ももえ)さんと堀合月華(つきか)さんは「文が短く、知りたいことがすぐ分かる」「スマホやテレビより詳しい」と理解を深め、上田琉希也(るきや)君、小西翼君は「野球やサッカーなどスポーツが詳しく書かれていて好き」と親しんでいる。

 身近な記事の比較 多角的考え養う

 大槌学園5年1組の新聞を使った授業は、国語の「書き手の意図を考えながら新聞を読もう」の単元・計7時間の中で2時間行われた。

 真夏日と猛暑日を伝える記事は教科書に載っている二つの記事で写真の扱いや切り口の違いを読み比べた後に取り上げられた。多田教諭は「子どもたちが生活体験として実感できる素材を使うことで理解が深まると考えた」と狙いを語る。

 「『暑さ』は共通するが真夏日と猛暑日を伝える写真や記事の違いから、編集者のメッセージを気付かせたかった」とし「子どもの感性は鋭く、『さんさん』や『うだる』といった語感を感じ取り熱中症予防の呼び掛けを行間から読み取るなど予想以上の気付きがあった」と目を細めた。

 新聞記事に記者や編集者ら人が介在している点を子どもたちに伝えることも授業の一環。次の授業では、プロ野球・楽天の試合で、同球団の勝因を外国人選手の活躍とした全国紙と、普代村出身の銀次の勝ち越し打を大きく扱った岩手日報の2紙を比較した。

 多田教諭は「同じ事実を報じていても、ニュースにはフィルターがかかっている。一つの情報をうのみにしてはいけない、与えられるだけではなく自分で判断する必要があることを学ばせたい。二つの記事に絞った比較は多角的にものを見る力、考える力を養う」と強調する。


  大槌学園・多田俊輔教諭  「気付き」あふれる新聞

 授業に新聞を活用する大槌学園の多田俊輔教諭に、教材としての利点や意義を聞いた。

 新聞は国語や社会、理科といった教科の枠を超えて授業に取り入れることができ、教材としての有効性を実感している。

 台風や気候を考えるのは理科や社会、行間を読むのは国語。全てを網羅し学習できる。さまざまな事柄がちりばめられた新聞には、子どもたちの気付きがあふれている。

 また、5年生は意図を持ち新聞を読み始める時期。チャレンジNIEのページのワークシートは宿題で数回使ったが子どもたちの反応はいい。今後も新聞に触れさせたい。

 一方で、津波を経験した子どもたちに対し、九州豪雨などインパクトの強い大災害の写真や記事が使えるか迷うことがある。避難生活や救助活動など、発達段階に応じ、命を守る活動や道徳など防災教育の中で生かしていきたい。

 (談)