矢巾町の不来方高(佐々木和哉校長、生徒828人)2学年の現代文の授業。見出しを空欄にしたプリントが配られた。

 岩手日報など3紙の7月3日付朝刊1面。東京都議選の結果が大見出しで報道された紙面だ。トップの都議選結果と、ワキに配置された将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段がデビュー30戦目で初黒星を喫した記事の見出し計8カ所が隠されている。

 プリントを作り指導に当たった畠山政文司書教諭は「見出しは究極の要約。『何が、どうした』という点が短い言葉で伝えられている」と説明。リード(前文)から見出しを考えさせた。

 生徒たちは「自分が編集者だったら、どの言葉でニュースを伝えるか」と、ポイントの要約部分を真剣に探した。

 「自民惨敗」「小池氏勢力」「過半数」と、畠山教諭は答えを示し「これがこの日のスタンダード。各新聞社とも最低限の字数で、同じニュースを報じている」と解説。藤井四段の記事については「どうして『ストップ』という言葉を使わなかったのか」「解答は『30連勝ならず』だが『連勝29で止まる』とした新聞もある」と投げかけ、言葉のニュアンスや数字の意味について説明した。

 吉田優花(ゆうか)さんは「見出しと大事な言葉の関係を考えたことはなかった。小論文で要点をまとめる練習になる」、小笠原秀芽(しゅうが)さんは「編集者の気持ちになった。新聞は語彙(ごい)力が付く」と実感。毎朝、新聞を手にする長谷川大貴(たいき)さんは見出しにも慣れ8問中6問正解。「紙面を開くと、読もうとは思っていない記事も目に入り広い知識が付く」と語った。

 畠山教諭は「見出しなど要約の仕方は、子どもたちの手本になる。自分自身の書いた冗長な文章、バランスの悪い文章に対し『ここが無駄だな』と気付かせる。小論文など記事に学ぶ点は多い」と強調する。

 今春の選抜高校野球大会の不来方・静岡戦を報じた岩手日報と静岡新聞の読み比べや新聞に関するアンケートも行う畠山教諭。新聞の言葉について「若者言葉と違い伝統的。また、文学的すぎず個性をそぎ落とし実用的だ」と指摘。「繊細なニュアンスなど、生徒に発見してほしい」と期待する。

選抜高校野球の不来方・静岡戦を報じる岩手日報と静岡新聞で作成した教材。記事の構成や表現からどちらの新聞かを考える

図書委員会の活動盛ん 新聞感想文 校内審査も

 NIEの取り組みが6年目に入った不来方高は、図書委員会の活動が活発だ。

 日本新聞協会の新聞感想文コンクール「いっしょに読もう新聞コンクール」は、図書委員会が中心となり全校で実施。夏休みに生徒が作成した応募作を各クラス2人の委員が校内審査し優秀作品を選んでいる。

 昨年審査に当たった図書委員は「国体の記事が多いと思ったが、自分の進路に関する記事を意識的に選んだ生徒が多かった」「新聞で話題になった人物と自分自身を比較して、自分がどうあるべきかを考えている人が多い」などと報告。

 コンクールに参加した生徒は、自身の興味関心に気付き、その分野の知識や考えを深める機会になったという。

 図書委員会のNIE活動はコンクールの審査だけにとどまらない。毎日、昼休みと放課後、当番で図書室の新聞を整理し同校関連の記事を切り抜く。貸し出し業務の傍ら記入する日誌には「今日の気になるニュース」のコーナーを設け、記事の要約と感想を記入する。

 「藤井四段の活躍」や「『共謀罪』成立強行へ」「内閣支持率の低下」「ユニセフの活動」など、政治経済から社会問題、大小さまざまの記事について、生徒たちの考え、驚き、喜びが書き込まれている。

 3年の柳未来(みく)さんと田上恵彩(めい)さんは「図書委員として活動するようになり、新聞を読む機会が増えた。世界の動きにも関心を持つようになった」「不来方高生の活躍に刺激を受けるし、進学・就職試験に向け社会情勢を知る上で新聞は有効」とページをめくり、小さな記事まで目を通していた。


 畠山政文教諭に聞く 簡潔な文章、構成の手本

 NIE活動を実践する畠山政文司書教諭に、教材としての新聞の意義や展望を聞いた。

 新聞記事は簡潔で、見出しは最低限の字数で伝える「究極の要約」と言える。生徒にとっては、自分が書いた文章の構成を見直す良い手本だ。また、結論から書く手法は、小論文の参考になる。会話では使わない言葉は、読むごとに身に付くだろう。

 生徒に新聞を与えると、とても一生懸命に読む。普段、読まないのは接する機会がないからだろう。図書委員は昼休みや放課後、気になる記事を選び、感想・要約を日誌に書く中で、限られた時間内での読み方を覚えている。

 現在は基礎トレーニングの段階だが、基本の「新聞に親しむ」ことから、語彙や表現といった「言葉に対する意識の高まり」につなげていきたい。 

(談)