盛岡市の松園小(高橋真司校長、児童280人)は、新聞記事のスクラップ活動を通じて自分の考えを持つとともに、手紙や投稿の形で発信する力を育んでいる。取り組みで大事にしているのが、意見のシェア(共有)。東日本大震災で被災した沿岸部の記事を取り入れた授業で児童らは視野を広げ、異なる境遇の子どもたちに思いを寄せた。

 4年生の児童40人は今春から、総合的な学習の時間を中心に朝の活動や家庭学習で、専用のノートに関心を持った記事を貼り、要約や感想を書き込んできた。題して「めざせ! ちびっ子新聞記者」。ノートを交換して感想を書き合い、発表する流れに、子どもたちもすっかり慣れた様子だ。

 2日の授業では、一つの記事についてみんなで考えた。仮設住宅が撤去された沿岸部の小学校で再び、自校の校庭で運動会ができるようになった岩手日報の記事。見出しの「念願」など言葉の意味を調べながら読み解く前日の授業を踏まえ、担任の中嶋一良教諭(49)が記事中の6年生児童のコメントについて問い掛けた。

 「『校庭でできる最初で最後の運動会。しっかり頑張る』と言ってるけど、どういう意味なんだろう」

 震災発生当時は2~3歳だった児童。地震や停電の記憶がある子もおり、次々と発言が飛び出す。

 「6年間、待ちに待って、やっとできるのだと思います」「万国旗の代わりに大量のこいのぼりを泳がせる伝統には、元気に過ごしてほしいというみんなの願いが込められています」

 沿岸部の小学校から転校してきた児童の「校庭に仮設住宅が立っていて、のびのびと運動ができなかった」という話にも耳を傾け、入学後に一度も校庭で運動会ができなかった小学生の境遇を考えた。

 ノートに書いた記事への思いを隣同士で感想を書き込む「シェアタイム」を設け、中嶋教諭は「友だちの良いところをたっぷりと書くことが、自分の勉強にもなりますよ」と、その後の発表へとつなげた。児童から記事に登場する小学校に手紙を書きたいとの声が上がり宿題として取り組むことを確認して授業を終えた。

記事の拡大コピーを黒板に掲示し、児童らに問い掛ける中嶋一良教諭

 都鳥(とどり)晃一君は「父が仕事で釜石に単身赴任したとき、仮設住宅がいっぱいあると話していた。手紙には『復興に向けて、これからもいろいろ大変だと思いますが頑張ってください』と書きたい」と心を寄せた。

 中嶋教諭は、スクラップで感じた「思い」を、手紙や投稿、個人新聞作りで発信する取り組みへと広げていく考え。五島(ごしま)桜咲(ろうさ)さんは、新聞を活用した授業について「新しい言葉を覚えられ、自分の中で世界が広がっていく感じ。みんなでシェアして意見をまとめ、新聞を作る活動を楽しみにしている」と笑顔を見せた。

 中嶋教諭は「まずは『新聞って面白い』と子どもたちに感じてもらいたい。積み重ねの中で得られる達成感は、子どもを大きく育てる。自分や友だちの存在を認めるシェア活動を大切にしていきたい」と見据える。

友達と交換、意見をシェア 投稿や個人新聞作り

 中嶋教諭は、今春卒業した児童を対象に2年間、NIE活動に取り組んだ。

 「1日1記事」を目標にした新聞スクラップは好きな記事選びからスタート。当初はコメントを書くだけだったノートは、シェアタイムを設け、友達と交換し読み合い、良い点を書き込み合うことで、要約の力が向上。多角的に考える力にも結び付いた。

被災地の記事を活用して学ぶ松園小4年の児童

 「算数や漢字練習ではなく、新聞でいいんですか」と質問していた保護者も2年目には絶賛。「家庭での会話が増え、ノートをのぞけば成果が見えたことが大きい」と中嶋教諭は語る。

 5年生の2学期からは、岩手日報・声欄に投稿。新聞スクラップや行事、活動で考え、感じたことを450字にまとめた。自分たちの作文が新聞に載ることで、子どもたちは「新聞の発信力」を実感。卒業までに全員の投稿が紙面化された。

 6年生後半からの個人新聞は同校の「補助犬の認知度を広げる活動」にも取り入れ、日本補助犬協会から感謝状を受けた。

 中嶋教諭は、発表の際の語彙(ごい)が増えたことなどを挙げ、「要約や漢字調べ、紙上で読まれることを意識した文章の作成により『読み解く力』、『書く力』が飛躍的に伸びた」とNIE効果を強調する。


  中嶋 一良教諭に聞く  情報選び、考える力育む

 新聞活用は手探りで始めたが、少しずつ積み上げるようにしている。大切なのは継続。その結果、「読み取る力」「考える力」「書く力」「構成する力」は格段に向上した。現在の学年でも、最終的には毎日の家庭学習にしたいが、急がず回数を増やしていきたい。

 新聞スクラップの共有はいろいろな考えがあることを気付かせ、新聞作りは自己開示の方法の一つだ。

 指導の根本には「新聞が子どもたちの身近なものであるように」との願いがある。タブレットと違い、新聞は見出しの流し読みだけで相当の情報が得られ、関心のない記事にも目が留まり物事への興味が広がる。

 情報があふれている現在、しっかり情報を入手し、考え、行動できる人間の育成につながる。

(談)