岩手町の沼宮内高(長谷川昌生校長、生徒108人)は、新聞を活用したミニプレゼンテーション(ミニプレ)に取り組んでいる。地元の話題や防災に関する記事を選び、要旨や意見をスピーチ。身近な地域から社会へと視野を広げ、自分の考えを伝える力を育んでいる。

 2年2組(15人)の現代文の授業は、生徒同士の顔がよく見えて対話しやすいようにと、「コ」の字形に机を配置している。

 冒頭、欠畑瑠奈(るな)さんは、全国で7人が犠牲になった台風21号被害を伝える岩手日報の記事(10月24日付)を基に発表した。KP法(紙芝居プレゼンテーション法)と呼ばれる手法で、伝えたい内容をコンパクトに書いた用紙を黒板に張っていく。「自分の町は大丈夫と過信せず、災害から命を守る行動を考えなければならない」と呼び掛けた。

スポーツ情報の扱われ方について新聞で確認する生徒

 ミニプレは①生徒Aが記事を選ぶ②生徒Bがスピーチ③生徒Aが感想④生徒Cが評価-のリレー方式でグループごとに取り組んでいる。発表用シート左側に記事を貼り、右側に「5W1H」を意識した要約、感想、スピーチ原稿、評価などを書くスタイル。シートはそのままスクラップファイルとしてつづられる。本年度は「岩手町」「復興・防災」「岩手県」「自分の将来」のテーマで4巡する計画という。

 田村圭梧(けいご)さんは「スピーチをするときは記事を読み込み、みんなに分かりやすく伝えるようにと心掛けている。ミニプレの活動で新聞を読む機会が増えた」と語る。

 山下佳子教諭は「1年生のときから続けており、文章のエッセンス(大事な要素)を取り出す力が付いてきた。クイズを織り交ぜて興味を引くなど、聞く相手を意識してスピーチするようにもなっている」と効果を語る。

 この日の現代文は、教科書に沿ってメディアとスポーツの歴史を読み解いた。時代とともに新聞、ラジオ、テレビなどのメディアが登場していく中で、実際に新聞を開いてスポーツ情報の取り上げ方を確認する場面も。「新聞がどういう構成となっているのかイメージできていないので、手に取って確かめさせたい」(山下教諭)という思いからだ。

 県民や国民の注目度が高い話題では紙面が多く割かれていることに気付き、「消費されるスポーツ」の理由を考える手だてに活用。生徒は興味深そうにページをめくった。

来夏の全国大会で授業公開へ NIEの楽しさ伝える

ミニプレゼンテーション用の発表シート

 ミニプレゼンテーションはKP法を用い、黒板に次々と要点が張り出される。耳で聴くだけではなく、視覚的にも訴えやすいのが特徴だ。テーマ選びもこだわった。その一つが「防災・復興」。全国各地で相次ぐ災害から地域で長年続けられている防災訓練まで、生徒は多彩な話題を選び、感想を伝え合うなどして考えを深めている。

 沼宮内高は昨年度、県教委のいわての防災スクールに指定され、地域の実情に応じた防災力向上を目指してきた。実際に地域を歩いて土砂崩れや増水の恐れがある地点を確認したり、岩手日報記者を招いて東日本大震災の犠牲者行動記録を教訓に学んだ。

 山下教諭はミニプレでのテーマ設定について「内陸部での防災教育を継続して考えていく一つのきっかけにしたい」と狙いを語る。

 このほか、昨年度は社会現象ともなったスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」について意見文を書き、新聞に投稿した。本年度も取り組む予定だ。

 同校は、来年7月に開催される第23回NIE全国大会盛岡大会で授業を公開する。日本新聞協会認定NIEアドバイザーでもある山下教諭は「大会を通じ、学びと実社会がより近づけばいい。誰でも、いつでも、楽しく取り組めるNIEを目指したい」と思いを巡らせる。


 山下佳子教諭に聞く 社会とつながる糸口に

 NIE活動を実践する山下佳子教諭に、新聞活用の意義を聞いた。

 インターネットからしか情報を得ない生徒が増えており、社会の出来事に興味・関心を持ってもらいたいと活用している。学びは学校の中で完結するものではなく、社会につながるものでなければならない。その糸口となるのが新聞だ。

 ミニプレゼンテーションは、ほかの実践者の取り組みを参考に昨年から始めた。テーマは今年から設け、1回目は「岩手町」に関する記事を探させた。「全国紙にはなかなか載らない」「岩手日報のこの面であれば載っている可能性が高い」などと特徴をとらえ、お互いに教え合う生徒の姿が見られた。

 授業はメディアとスポーツの関係を評論文から読み解いた。本町はホッケー競技が盛んだが「野球と比べて取り上げられ方はどうだろう」「その理由は」などと問い掛けた。身近なものに引き寄せて「自分事」として考えさせたい。

 新聞は、教材として手軽に使える。ちょっと意識して読むだけで、授業で取り入れられそうな記事が目に飛び込んでくるようになる。社会に巣立つ前に多く触れさせたい。

(談)