県NIE協議会(会長・藤井知弘岩手大教授)は、盛岡市と大槌町で本年度NIE公開セミナーを開いた。盛岡会場(11月24日)は児玉忠さん(宮城教育大教授)、大槌学園(12月14日)では関口修司さん(日本新聞協会NIEコーディネーター)がそれぞれ講演。新学習指導要領とNIEの関わりについて解説し、新聞活用のポイントを示した。両セミナーには県内の小中高校・専門学校の教師、大学生ら合わせて約100人が参加。NIEの教育的効果について認識を深めた。2氏の講演内容を紹介する。

児玉 忠さん(宮城教育大教授) 新聞持つ力生かして 問われる活用の質

「新聞は言葉の力を育てる」と語る児玉忠さん

 NIEはこれから質を問われる時代になる。「教科書にあるから使ってくれ」というのではなく、他のメディアとどう違い、どのような優位性があり、学習指導要領とどういう親和性があるのか-の点で、質を高めなければならない。

 新学習指導要領は、資質・能力を強く意識することを求める。資質・能力は▽知識および技能▽思考力、判断力、表現力▽学びに向かう力、人間性-だが、これまで各教科自由だった評価を全教科においてこの三つの枠組みで整理した。

 また、教科書を超えた全ての学習基盤として育まれ活用される資質・能力として、言語能力と情報活用能力を挙げる。日本NIE学会の掲げる目標の読解力、情報活用能力、メディアリテラシーの育成と合致しておりNIEが全教科で必要となることを確認したい。

 新聞活用について、どんなときに使うと便利か、どんな問題が解決できるのか-を明確にすることが重要だ。

 NIEを行う上で大切なのは「言葉と同じで、新聞は事実ではない」ということ。言葉は記号であり、言葉にした瞬間、発話者の判断が入る。だから「言葉は事実ではない」。同様に、新聞は、記者が組み立て、カメラマンが切り取った「事実という『物』ではない」との認識だ。ただ、事実に寄り添った部分を便宜上「事実」とし、事実から離れようとした部分を「意見」と呼んで子どもたちに教えるが、「新聞イコール事実」と思った時、読み間違うことがある。

 新聞は、書き手と読み手のコミュニケーション。書き手は意図を持ち、読み手への効果を考える。両者をトータルに理解することが教材化するときに大事だ。

 国語科におけるPISA(経済協力開発機構=OECD=が行う学習到達度調査)型読解力は、「正しく、詳しく読む」というこれまでの読解力に、「そして私はこう思った(自分の考え)」を加え、テキストを使った課題解決を求めた。それが国際標準だという。

 新聞を活用する場合も、内容を読み取るだけではなく、どういう意図で書かれ、どういう効果を与えるか-という新聞観を持つこと。さらに学習者の課題解決に活用する読み方も必要になる。自分の考えを持つということは評価的に読むことだ。評価的に読み、活用し、課題を解決することが国語科のスタンダード。国語科の新しい読みの学習は、他教科の課題解決学習にもリンクしていく。

 小学校国語科の教科書教材でみると、4年生の新聞作りは学習のまとめや生活記録のような作文だが、読み合いや張り出しを目的に、相手意識を持ったコミュニケーションとしての言語を学習する。また、5年生の読み比べは、文章構成や写真の効果を学んだ上で、書き手の意図と読み手への効果、書き方の工夫を考える。

 教育現場は教科書で授業を行っている。だが、教科書は10年に1度しか改訂されない。一方、新聞は毎日更新される。授業に効果的に活用する方策を考えるなど、教育界と新聞界がウィンウィンの関係になる仕掛けが求められる。

 児玉 忠さん (こだま・ただし)北海道教育大卒、大阪教育大大学院修士課程修了。専門領域は国語科教育。高校教諭、弘前大教授などを経て、15年宮城教育大教授。10~15年、青森県NIE推進協議会長。54歳。北海道出身。

関口 修司さん(NIEコーディネーター) 効果的な朝の15分間 無理せず継続が鍵

「子どもの成長のためにNIEは効果的だ」と語る関口修司さん

 小学校教諭として担任を持っていたときからNIEに無理なく取り組んできた。子どもは伸びる。しかし担任が代わると、いつの間にか新聞を読まなくなる現状を寂しく感じていた。そこで校長になったとき、学校を挙げて取り組んだ。

 週1回、朝学習の時間に15分間のNIEタイムを設けた。教科・領域に入っておらず、カリキュラムにも入れていない。だから目標も設けない。高学年であれば自由に読んでスクラップし、コメントを書く。低学年は漢字がほとんど読めないが、写真などからアバウトながら内容をつかめるようになる。

 コンセプトの一つは、一生懸命やらないこと。無理をして続かないのでは意味がない。確かに一手間かかるが、子どもたちを育てるのに〝二手間分〟楽になるのがNIEだ。

 新学習指導要領の総則に「新聞」が盛り込まれたのは各教科・領域、全教育活動の中で心して取り組んでほしいということだ。NIEの関連した事項はとても多い。言語能力の確実な育成として語彙(ごい)の習得がある。いろんな言葉に触れさせないと、理解にしても表現にしても深みが出てこない。

 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では、新聞をたくさん読む子がほとんど読まない子より平均点が高い傾向にある。新聞を読んでいる子は、家庭の経済環境、教育環境が良いと言えなくもない。「新聞を読んだら学力が上がる」という因果関係になったら一番いい。NIEをやって読解力を付けると算数・数学も確実に伸びる。読解力がネックで点数が出ていない子どもたちが多い。問題文を読んでいる間に嫌になってしまう。

 フェイクニュースがまん延する社会だ。真実より感情が優先され、自分にとっての都合の良しあしが判断基準になる。パニック状態に陥ったとき、極端な情報を信じてしまいかねない。冷静になって正しい情報かどうかを見極める力を付けなければならない。

 近未来は仕事が自動化され、人工知能(AI)やロボットが担うともいう。子どもたちは、答えが予測できない時代を生きていかなければならない。応用力、創造力に加え、コミュニケーション力が大事になる。

 NIEタイムで学力は上がる。それには日常的に新聞に接していることが大事。子どもが目につくところに置くなどの環境づくり、学校司書活用も一つの手である。複数紙の読み比べも有効だ。新聞は事実を切り取っているが、事実の切り取り方が新聞社によって微妙に違う。

 先生や子どもたち自身がワークシートを作ることで、新聞は何部も必要ない。4こま漫画を物語にすると、15分間で見事なストーリーを仕立てる子どもも出てくる。低学年や特別支援学級の子どもたちほど伸びが目覚ましい。

 初めは子どもたちも先生も面倒に思うだろう。週1回、3カ月続けるうちに「やってよかった」とほぼ全員言うようになる。ちょっとした工夫で子どもたちは楽しく取り組む。まずは先生が新聞を楽しんでほしい。自然に子どもたちに伝わっていく。

 東日本大震災後、大槌町には何度か訪れ、復興の様子を感じてきた。被災地だからこそできる、意味があるNIEを発信してもらいたい。

 関口 修司さん (せきぐち・しゅうじ)東京学芸大卒。都内の公立小学校教諭を経て、05年から北区・王子第三小、東十条小、滝野川小校長。06年から「NIEタイム」を導入し、区内の全公立小中学校が取り組む「新聞大好きプロジェクト」につなげた。16年から日本新聞協会NIEコーディネーター。62歳。東京都出身。