宮城県NIE研究大会(宮城県NIE委員会など主催)は仙台市の仙台城南高でこのほど開かれ、公開授業や講演が行われた。教師ら約40人が参加し、新聞活用の可能性を探った大会の様子を伝える。

 仙台城南高(中川西剛校長、生徒1184人)は、NIEと情報通信技術(ICT)を融合した実践に力を入れている。校舎全館に無線LAN「WiFi(ワイファイ)」を整備し、生徒全員がタブレット端末を所持。充実したデジタル環境を生かしながら、新聞を〝窓口〟に学びの質を高めようとしている。

 8日に行われた探究科3年「現代文B」の授業は、虎岩容子教諭がディベート教育の実践を公開した。「勉強中にスマートフォンを使うほど成績は下がるのか?」をテーマにした新聞記事を使い、賛否の立場からプレゼンテーションする内容。「論理的に、相手を納得させる説明をしよう」との学習目標を確認した。

グループでまとめた資料を基にプレゼンテーションする仙台城南高の生徒

 生徒は事前に、タブレット端末を使って根拠となるデータを収集し、発表用資料を作成した。「論拠を明確にした伝え方かどうか」をポイントに、教室のスクリーンに映しながら意見を交わした。

 「成績は下がる」としたグループは「無料通信アプリのLINE(ライン)やツイッターだけでなく、電卓機能を使う場合もある。集中力が落ち、コミュニケーション能力や計算能力も低下する。社会に出たときに大きな弊害になるのでは」と述べ、別のグループは利用時間別の学習定着度や脳への影響について注目し「スマホの長時間使用は、学習効果を失いかねない」とアピールした。

 一方、「成績は下がらない」としたグループは「アプリで通信教育教材を効率よく学習することもできる。うまく活用すれば成績の維持・向上が望める」「スマホが無くても、ゲーム機などで動画を視聴したり、他の人とつながることができる。時間的なことを含め、どう付き合うかの視点が重要だ」と反論した。

タブレット端末やスマートフォンを使いながら意見を交わす生徒

 1年生のときからプレゼンテーションの方法を学んでいる生徒もおり、スクリーンを前にしての発表は慣れた様子。「成績は下がらない」派の佐野志帆さんは「『下がる』とする資料ばかりで、探すのに苦労した。ディベート形式は初めてで試行錯誤したが、うまくできたと思う。自分が目指す職業は人前で話すことが要求されるので、今回のような学習は役立ちそう」と笑顔を見せた。

 授業後の全体会で、日本新聞協会認定アドバイザーの斎藤昭雄さんは「新聞とICTを融合した興味深い実践だった。授業導入部の関心を引く手だてとして新聞は最適。ページをめくるたびに発見があり、学びの入り口になる。新聞の力を生かしてほしい」と呼び掛けた。

 探究活動で記事を活用

 仙台城南高は、男女共学の私立高として特進、探究、科学技術の3学科で構成している。グローバル教育とともに柱の一つとするICT教育は、1人1台のタブレット端末を駆使して多彩な活動に取り組む。探究活動の一環では資料作成や発表の際、必要に応じて新聞を活用。社会との接点を念頭に、情報活用能力や効果的な自己表現力を身に付けている。

 NIE実践指定校としては2年目。国語科を中心にワークシートに取り組むほか、英字新聞を使ってキーワードを抜き書きして見出しを考えさせるなど、生徒は楽しみながら新聞に触れている。

 ICT環境を整え、情報化時代で生きるコミュニケーション能力向上に力を入れているのも特徴だ。なかでも探究科は、進路に向けての調べ学習から始まり、興味・関心を持つゼミの受講、アプローチ方法や自分の考えをまとめて発表するプレゼンテーションに至るまで、生徒の主体性を大事にしている。

 NIE担当の鈴木理恵教諭は「生徒自身が新聞社のデータベースを閲覧できるようにし、活用の幅が広がっている」と説明する。

 中川西剛校長は「ICTとNIEをどう組み合わせて学びに生かすのか、いろんな可能性に挑戦し、宮城の新しいNIEを目指したい」と意欲を示す。


 二田貴広氏(奈良女子大付属中等教育学校教諭)講演 効果的な学びの場つくる

 

豊富な実践例を交えながらNIEについて話す二田貴広教諭

同大会では奈良女子大付属中等教育学校の二田(ふただ)貴広教諭(国語科)が「学習指導要領がNIEに追いついた~資質・能力育成とNIE」と題して講演した。多彩な実践を紹介し「主体的・対話的に、問題発見・解決の学習をしようと考えたとき、NIEは効果的な学びの場をつくってくれる」と強調した。

 講演要旨は次の通り。

 自分の人生をより良く生きる力を身に付けてほしいと、新聞を取り入れ始めた。記事の要約や感想を書かせるなど、さまざまな活動を試みる中で、生徒から「(新聞の文字の)明朝体を見るのがつらい」と嘆かれた。そこで新聞をまるごと生徒に預け、読んだり切り抜いたりと思い思いのアプローチをするのを見守ったところ「また読みたい。読んで考えたい」との声が上がった。

 楽しかった経験があり「役に立つ」「感動した」と思えば、生徒は自ら読むし、授業でもどんどん使える。新聞記者の出前講座を受け、インターネット電話「スカイプ」を活用して海外駐在の記者に話を聞くこともあった。教師と生徒が認め合うことで、教師の発想を超える学びも生まれるだろう。

 次期学習指導要領は、主体的・対話的で深い学びがポイントになっている。このアクティブ・ラーニングの視点でNIEを考えると▽記事を読む▽インターネットで調べたり、専門家に聞く▽多様な考えを交流する▽自らの学びを振り返り、新しい学びに進む-というプロセスが、深い学びにつながるのではないか。NIEを実践してきた先生方は、アクティブ・ラーニングをすでに取り入れてきたといえる。

 NIEを実践する上で「なぜ新聞でなければならないのか」と、常に問われている。どのような取り組みができるのかを教師自身が自問自答しつつ、NIEの可能性を広げてほしい。