「公約をしっかり読めて良かった。授業がなければ、読まなかったかも」「投票に対する意識が薄かったと実感した。棄権せず、1票を投じたい」

 宮古商高(高橋正浩校長、生徒449人)は10~13日、3学年全4クラスで急きょ主権者教育を行った。生徒の感想は、衆院選への意識を高めるものだった。

 選挙権年齢が18歳に引き下げられ初の衆院選。だが、突然の解散で準備に追われる各地の選挙管理委員会は学校への講師派遣ができず、22日の投票日まで予定していた主権者教育の授業の延期が相次いでいる。

 同校は投票日までの主権者教育を予定していなかったが、3年生の3分の2以上が18歳。生徒たちは初めての投票を前に、政党、候補をどう選ぶか戸惑っているようにも見えた。放置すれば将来的な選挙への無関心にもつながりかねない。

 「しっかり初めての投票をしてほしい」と考えた地歴公民の尾形真也教諭(42)は同僚教師に相談。各クラスの世界史2時間を主権者教育に充てた。

主権者教育1時間目の選挙制度の復習や新聞を読み解くワークシート(上)、主権者教育2時間目の各党の公約をメモするためのワークシート(下)

 1時間目は10日付岩手日報に掲載された識者メッセージ「18歳の君たちへ」を活用。1年時に学んだ選挙制度の復習と合わせたワークシートで「当事者性」と「身近な生活に影響している政治」を考える狙いだ。

 2時間目は同日付の公約特集を使い、各党の政策を比較した。生徒は、経済・消費税、外交・安保、憲法など6項目から2項目を選択。ワークシートにメモを取り、共感(支持)できる部分に赤線を引いた後、グループで討論。最後に、支持できる政党・政策を選び、その理由を考えた。

 授業後、千田直人さんは「自分が投票してもあまり変わらない-と考えていたが、投票には行きたいと思う」と意識が高まり、佐々木力さんは「みんな関心が違い、視野が広がった。公約を全て読み、自分で考え、雰囲気や他人の意見に流されずに1票を投じたい」と投票へ向け、やるべきことが見えたようだった。

 17歳の生徒の学びにもなった。宮本千春さんは「教科書は単語、知識だけだが、新聞はタイムリーで各党の公約に矛盾がないかなど掘り下げて考えられた。(将来の)1票に生かしたい」と刺激を受けていた。

 鈴木卓副校長は「選挙や投票への関心を高める機会になることを期待する」と生徒たちを見守った。

全校で投稿書き写し 多角的な視点養う

 宮古商高では、若い世代が書いた新聞投稿の書き写しに全校を挙げ取り組んでいる。

 1、3年生は週末の課題として、投稿数本、書き写し欄、意見欄を印刷したプリントが木曜日に配布され、月曜日に提出。2年生は木曜日の課題として金曜日に提出している。

 狙いは、同世代が、どんなことを考え、どんな意見を持っているか-を知り自分の意見を持つことや文章を読んで書くこと。2012年のスタート以来、軌道に乗り6年目を迎えた。

 尾形教諭によると、最初25字8行の意見欄に数行しか書けない生徒も、年を追うごとに行数が増え、内容も高校生らしい考えに高まるという。

 3年生の野崎竜也さんは「同世代のいろいろな考えが分かる。共感できるものや自分とは異なる意見を読み、考えることで、多角的な視点が身に付き、勉強になる」と取り組んでいる。


 尾形真也教諭に聞く 地道な公約確認が大切

 国政初投票を目前にした高校生に対する主権者教育の意義などについて尾形真也教諭に聞いた。

 18歳の高校生にとって初めての国政選挙だが、様子を見ていると、投票に至るまでの行動、何をすればよいかが分からないのかもしれない-と思えた。

 ちょうど、10日に識者のメッセージや公約が岩手日報に掲載され、当事者性や政治が身近な生活に影響していることを学ばせる教材になると考えた。

 狙いは、当事者性や政治と生活の関わりなどの心構えのほか、公約をしっかり読むこと。各党、候補は、どのような主張をしているか、共感(支持)できる政策はあるか-。生徒たちは今後、選挙があるたびに政党や候補を選ばなければならない。投票に向けては、公約を地道に確認する作業が大切だ。

 公約自体、難しい部分もあるが、生徒たちは書かれていることから自分の考えを持ったようだ。現在の3年生は、宮古市長選があったため年明けに模擬選挙を経験している。だが、投票を間近に控えたこの時期の新聞を使った授業は、模擬選挙より現実味があったと感じている。今回の選挙ばかりでなく、今後の選挙の投票にもつながることを期待している。

(談)