情報処理技術者を育成する北上市の北上コンピュータ・アカデミー(小原和雄校長、学生123人)は1年生を対象に「新聞教育」の授業を取り入れている。

 年間4回の締めくくりとなる4日は、これまでの振り返りとマスメディアについて考えた。学生たちは4人一組のグループに分かれ、新聞とネット情報のメリット、デメリットについて討論した。

 新聞派2人、ネット派2人に分かれ、新聞派は新聞のメリットを主張し、ネット派のデメリットを指摘、ネット派はその逆の発表を行うディスカッション。討議を通じ新聞の特長を模索し、自分の意見を「はがき新聞」に400字程度でまとめた。

 討論では、新聞について「堅いイメージがある」「字が小さく、紙が大きすぎて読みにくい」とする意見がある一方、「手軽さではウェブニュースやテレビだが、正確さ、信頼性は新聞」「新聞は幅広い知識が得られる。読解力もつく」など肯定的な受け止めが多かった。

 CG・CADコースの日向啓史さん(18)は「自分の手でめくりながら読むことで記憶に残る」と感じ、ビジネスコースの高橋菜奈さん(18)は「ネットの方が速報性があるが、新聞は情報がたくさんつまっている」と考えた。

 新聞教育は、同校の「社会人基礎力」育成を目指す取り組みの一環。一般教養を身に付け、考え、発言する力や対話力の向上を目指す。4回の授業は、新聞の概要や仕組みを学ぶ概論から始まり、読み込むことで紙面や記事の構成などを学んできた。3回目の前回は、講座当日の新聞を読み、意見文を岩手日報の「声」の欄に投稿した。

 指導に当たる元黒沢尻東小校長で現在、同市の教育委員を務める非常勤講師の高橋きぬ代さん(66)は「一日に新聞を5分でも10分でも読むことは人間力を高める」と強調する。「生きる上で大切な、一つ一つの事象に対し自分の考えを持ち反応することができるようになる」とした上で「文章を読みこなし、系統的に考える力をつけるにはネットだけでは弱い。さまざまな分野の記事を読み、考える思考回路を身に付けてほしい」と期待する。

スクラップも活用 発表の力を育成

 北上コンピュータ・アカデミーは「新聞教育」のほか、小原和雄校長が1年生の各クラスで1カ月に2回担当する教養の授業でも新聞を活用している。

意見をはがき新聞にまとめる学生

 学生は、自宅や寮でスクラップノートに興味のある記事を貼り、要約、感想を記入。授業時間に発表する。自分では思いつかないクラスメートの発表を聞き、ニュースへの関心を高め、知識を広げている。

 日向啓史さんもその一人だ。「気になった記事を探す教養の授業を受け、新聞で情報を得る大切さに気付いた」と実感する。

 新聞スクラップの狙いについて、小原校長は「世の中で起きていることを知り、考え、自分自身で結論を出し、発表する力を付けたい」と説明。新聞から情報を得て、まとめ、自分の言葉で表現する学生たちに目を細める。

 非常勤講師6年目となる高橋きぬ代さんは「新聞スクラップの取り組みにより多くの場面で子どもたちの使う言葉が広がった」と黒沢尻東小校長時代を振り返り、「継続的なスクラップは短期間で効率よく思考力を伸ばし、アンテナを高くする」と評価。取り組みを見守る。


 小原和雄校長に聞く 「考える材料」日々満載

 北上コンピュータ・アカデミーにおける新聞活用の意義を小原和雄校長に聞いた。

 本校は情報処理技術者の育成施設だが、本来、情報処理は人間あってのもの。技術者には、人間力や対話力が欠かせない。

 新聞は、ネットやテレビと違い、何度も繰り返し読むことができる。一歩立ち止まり、じっくりと考えられる媒体だ。また、情報量が多く、毎日見ていれば幅広い知識が得られる。

 一つの事象をいろいろな角度から捉え、共感できる論調や自分と異なった意見が紹介されている点も特徴で、「考える材料」がつまっていると言ってもいい。その中で、考え、意見をまとめ、表現することで、思考力、表現力が養われる。

 手軽なネットニュースを検証する手段にもなる。情報が氾濫する現在、真偽を確かめることを学生に勧めたい。ネット社会だからこそ、信頼性の高い新聞を手にとってほしい。 

(談)