「世界遺産はお寺や平泉町だけのものではない」。奥州市江刺区で19日開かれた講座で、県文化振興事業団埋蔵文化財センターの相原康二所長は「奥州市の中の『平泉の文化遺産』」と題して話し、こう強調した。
会場には市民約40人が集まり、熱心に聴講。相原所長は「奥州市全域が平泉の遺産と関連が深い。住民が身近にある遺産について、最低限のことは話せるようになりたい」と訴え、遺跡の体験発掘などもその契機になると持論を展開した。
2年後に向け、平泉町のみならず、県民全体の関心をどう高めていくか。市内に白鳥舘遺跡(前沢区)、長者ケ原廃寺跡(衣川区)の2つのコアゾーン(核心地域)を持つ奥州市は、5つの区を5回巡る世界遺産講座を1年間かけて実施している。
市世界遺産登録推進室の小野寺正幸主幹は「江刺も平泉とは前史からのつながりがある。合併で奥州市となり、さらに広がりを持たせながら盛り上げたい」と意気込む。
観光資源に−との期待も膨らむ。増田知事は推薦決定前日の20日、盛岡市内のシンポジウムで東北各県の知事を前に「観光が登録の目的ではないが、結果としてたくさんの人に地域を見てもらうことにつながる」と述べ、世界遺産ブランドに寄せる思いを披露した。
県は現在、平泉観光の行動計画を策定しており▽新たな平泉のイメージ形成▽情報発信の強化▽海外からの誘客対応−などを重点に据える。「登録前年」となることが想定される来年夏はJRによる大型観光キャンペーンも予定され、旅行業者には平泉関連の旅行商品開発を強く働き掛ける。
県観光経済交流課の橋本良隆総括課長は「遺産登録は大きなエポック。平泉は知的好奇心を求める観光客を引きつけるなど、他の観光地にない要素を持つ。まずこの魅力を伝えること」と語る。
もちろん、一過性のブームであってはならない。県教委生涯学習文化課の斎藤憲一郎総括課長は「登録は遺産を守っていく世界的な責任が生じるスタート」と指摘する。
今回の推薦に当たっては、個々の寺院や遺跡が世界遺産なのではなく、空間全体が世界遺産だ、と価値をとらえ直した。
盛岡大の大矢邦宣教授は「平泉は日本独特の現世浄土。だから住民は浄土の住人、住宅も浄土の構成物になる。今は損なっている点もあるが、これから本当の浄土にしていくことが、私たちに課せられている」と説く。
ただそれは「すぐに家を壊せ、ではなく、長い時間をかけて取り組むこと。骨寺村も今は価値が分からなくても、50年、100年と維持できたら、今以上に光り輝く」とも。
日本人の理想郷、浄土空間としての平泉。これからの道のりを前に、県民一人一人があらためてその価値の重さを知り、胸に刻みたい。
(報道部・細田清、村上俊介)
【写真=一関市の骨寺村荘園遺跡。将来にわたり、この景観を守っていく責任がある】
(2006.7.25)
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