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@.浄土思想具現化 2008年5月2日
息づく平等、非戦の魂

 1日開幕した春の藤原まつり。中尊寺境内を練行する僧侶たちは、観光客が手を合わせると、それに応えるように会釈を返す。いつもと変わらない穏やかな表情だ。

 「平泉の浄土思想は平和を願うユネスコの目的に合致する」。3月、現地を視察した国連教育科学文化機関(ユネスコ)日本政府代表部の近藤誠一特命全権大使は「平泉」をこう評価した。

 平泉の文化遺産は、奥州・藤原氏が独自に築いた寺院や庭園などの遺跡群。浄土の世界を具現化した都市と、その文化的景観に意義を持つ。

 「文化的景観」(庭園、信仰の山など)という世界遺産の概念は、1990年代半ばに生まれた。登録物件に記念的建造物が多い「偏り」の是正が背景にある。

 この新たな機運の中で、「平泉」は浄土庭園が注目され、世界遺産候補となった。「目に見える建造物」ではなく、「精神性」が色濃いのが特徴だ。

 初代藤原清衡が「供養願文(がんもん)」に込めた「平等と非戦」の思想。清衡の魂は今なお住民の営み、宗教儀礼や行事を通じて息づいている。

 一関市の骨寺村荘園遺跡で案内役を務めるいわいの里ガイドの会の金野光夫さん(66)は「中世の景観を守ってきた心は地域の誇りだ」と胸を張る。

 各地で紛争が絶えず、環境破壊、そして道徳心の欠如が叫ばれる現代。世界遺産登録は平泉が守り続けてきた精神を世界に発信するチャンスだ。

 文化庁の内藤敏也記念物課長は「平泉は『平和』という付加的な要素が世界に訴える上でポイントになる」と認識する。

 平泉町平泉の主婦千葉美由紀さん(36)は「世界遺産登録に向けた動きを機に、たくさんの史跡に興味を持つようになった。授業で学んでいる子どもにも教わりながら、親子で知識を深めたい」と郷土愛を強める。

 世界遺産への道は、私たち県民が平泉の意義を見つめ直すときでもある。

【写真=中尊寺境内を練行する僧侶。「平泉」を築いた奥州・藤原氏の精神は脈々と受け継がれている】



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