WWW http://www.iwate-np.co.jp

平泉世界へ イコモス「登録」勧告

(下)被災地とともに 県土復興支える光明 2011年5月12日

 

 甚大な被害をもたらし、多くの尊い命を奪った東日本大震災発生から11日で2カ月。本県をはじめ、東北が復興へと歩みだす中、「平泉の文化遺産」の「登録」勧告は被災者にも一筋の希望を与えた。

 陸前高田市米崎町の建設業千葉豊之(とよし)さん(63)は「連日がれきの撤去作業をやるせない思いで続けている。登録勧告は、震災で沈みがちな岩手にとって明るいニュースで元気が出る。ぜひ登録が実現してほしい」と話す。

 「平泉」は、初代清衡の「中尊寺建立供養願文」に示される非戦・平和の願いを込めてつくられた浄土の地。今回の登録勧告は、現世に浄土をつくろうとした「平泉」の価値が認められたと言える。

 中尊寺の菅野澄順執事長は「津波は天災だが亡くなった人は理由なく犠牲になった。供養願文に重ねることができる」と語り、「登録を励みに沿岸と内陸が共に輝き、前に進むことが大切だ」と震災と同時期になった勧告の意味を受け止める。

 県内では「平泉」を復興の象徴にしようという動きも出始めた。

平泉観光協会は震災後、今年の主要行事を取りやめたが、8月16日の送り盆に行われる「大文字まつり」は必ず行うことを決定。震災で亡くなった人々を供養し、早期復興を祈ろうと住民らが準備を進める。

 まつりの火は、中尊寺が1958年に天台宗東北大本山になって以来、本堂にともる「不滅の法灯」から採火。勧告翌日の8日には、不滅の法灯に使う菜種油を奉納する平泉なのはな会の会員が、菜の花畑で除草作業に汗を流した。

 会員で平泉町平泉の高橋禎男さん(70)は「心を合わせて作った菜種油が復興を祈る火の糧になると思うと力が入る」と張り切る。

 同協会の小野寺邦夫会長は「亡くなった人を供養してから動きだすのが『平泉』。鎮魂の行事が絶えないよう活動継承の輪を広げる」と誓う。

 県や同町は、震災の影響で停滞する観光・産業活性化のきっかけとしても登録に期待。県観光課は、2012年4〜6月に本県単独開催される観光キャンペーン・いわてデスティネーションキャンペーンのプレキャンペーンの一環として「平泉」の情報発信を強化していく。

 「人と人との共生、人と自然の共生という平泉の思想が復興の理念になる」と達増知事。世界に認められた「平泉」の浄土思想は、県の復興ビジョンの基底を成す理念になりそうだ。

【写真=中尊寺の「不滅の法灯」に使う菜種油を奉納する活動に取り組む平泉なのはな会のメンバー=平泉町平泉】


 
トップへ