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悲願の登録 平泉の文化遺産

景観を守る 町民の郷土愛が力に 2011年6月30日

 

 「平泉」の世界遺産登録の歓喜に沸く平泉町。登録に際し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で「金鶏山と他の4資産の間の眺望について障害のない状態を維持すること」と要請された。遺産と共に暮らす町民は、郷土愛で奥州藤原氏の景観を未来につなぐ。

 JR平泉駅から世界遺産に登録された無量光院跡を通り中尊寺入り口に至る通称中尊寺通り。かつて奥州道中と呼ばれた主要街道は、空き店舗が点在し往時の面影はない。

 しかし、3年前の登録延期などが地域を見つめ直す機会になり、遺産に配慮した町づくりが熱を帯び始めた。「和」を基調に歩いて楽しめる空間に生まれ変わろうとしている。

 電線を地中化するほか、ほぼ中央に位置する無量光院跡の区域は従来のアスファルト舗装から小さな石を敷き詰めたような路面にする。町民や県、町が協議を重ねデザイン設計を決定した。

 世界遺産委は「主要な道路改修の提案にあたっては、構成資産の周辺環境の見え方を含め『遺産影響評価』を行う」ように要請。推薦書に開発計画を示した中尊寺通りへの指摘とみられる。

 中尊寺通りまちなみ整備検討会作業部会座長の小野寺郁夫さん(58)は「官民が力を合わせて煮詰めたデザイン設計。高い評価を得られるはず」と自信を示す。

 沿線住民らは昨年3月、道路沿いの家屋などに格子やあんどんを整え、建築物と周辺を美しく見せる「まちなみの方向性」を策定し、取り組みも始めた。

 木製のベンチや水車を設置した休み処(どころ)を設けている同町の会社役員千葉哲也さん(40)は「和風の町並みを築き、子孫に引き継ぐ」と将来を見据える。

 一方、住民らは登録をビジネスチャンスととらえ、町内への進出を目指す大型店など「外部資本」の動向に警戒感を強める。町景観条例は、建築物を和風に限定し屋根の勾配を定めるなど制約は厳しい。ただ、条例による規制には限界もあり、今後、景観の乱れが起きない保証はない。

 同条例制定前、世界遺産のために生活が犠牲になることに抵抗感を抱く人は多かった。住民と行政の協議の末、「良い環境を後世に残すため」との一点で合意を見いだした。

 子孫に地域の景観を守り伝える町民の強い意志が、世界遺産を保全する力の源になる。

 平泉町の景観条例 05年に自主条例として施行、09年には景観法に基づく罰則がある新条例を施行した。町内全域が規制対象。建築物の建設を行う場合、届け出や認定申請が必要。中尊寺、毛越寺、無量光院跡などの構成資産がある「景観地区」では▽建築物の高さ10メートル▽和風建築▽色彩や緑化に配慮する−などの規制がある。

【写真=中尊寺通り沿いに設置した休憩所で観光客や住民と談笑する千葉哲也さん(右から3人目)ら=平泉町平泉】


 
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