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悲願の登録 平泉の文化遺産

石見銀山(下) 価値を伝える 継続的な仕組み模索 2011年6月29日

 

 「石見(いわみ)銀山はシンボルになる建物がなく、目に見えにくい。説明することで一人一人の頭の中に描いてもらい、歩いて納得してもらう」。石見銀山ガイドの会(島根県大田市)の伊藤寿美(すみ)さん(64)はガイドの意義をこう語る。

 伊藤さんの説明を聞きながら、銀を採掘するための坑道「龍源寺間歩(まぶ)」を見学した埼玉県の会社員小磯邦仁さん(61)は「パンフレットだけではどこを見れば良いか迷う。説明を受けてよく分かった」と感謝した。

 同会は石見銀山の歴史や魅力を伝えるため、2000年に地元有志によって設立された。現在の会員は約70人。「観光を感動に変えるガイド」をモットーに、活動している。

 設立当初はボランティアとして無料で行っていたが、登録前年の06年に有料化。石見銀山の語り手の「プロ」として責任と誇りを持つためだ。現在は有料に加え、無料ツアーも行う。

 世界遺産登録後は観光客が急増。06年が約40万人だったのに対し、登録年の07年は約71万人、08年が約81万人。龍源寺間歩では約9万5千人から約36万人となった。同会もフル回転で活動し、多くの観光客を迎え入れた。

 同会の和上豊子会長は「訪れる人に合わせて、多面的な視点で石見銀山の魅力を伝える。世界遺産を守っていくためには価値を多くの人に知ってもらうことが必要だ」と啓発の重要性を示す。

 石見銀山は遺産、環境の保全のため「歩く観光」を推進している。自家用車やレンタカーなどで来訪する観光客のための駐車場の一つが「石見銀山世界遺産センター」。同センターでは自然と共生した鉱山という価値や歴史を学ぶことができる。

 世界遺産登録から4年目を迎えた石見銀山。観光客は減少傾向にあり、10年は約50万人。島根県や大田市は5周年に向けて、あらためて価値を発信する事業などを構想中だ。

 同市産業振興部観光振興課の川島穂士輝(ほしてる)課長は「今後は広範囲の遺跡を見て回るコースを増やしていきたい。世界遺産は継続的な取り組みが必要。観光客の数だけに左右されず、質で勝負していきたい」と戦略を練る。

 「平泉の文化遺産」でも登録後の観光客増加が期待される。だが、一過性ではなく現世に平和な浄土をつくろうとした遺産の価値を継続的に理解してもらう仕組みづくりが必要だ。

【写真=掲示板を使いながら観光客に説明する石見銀山ガイドの会の伊藤寿美さん(左)=島根県大田市】


 
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